インタビュー
片山享監督『轟音』

片山 享 (監督) 映画『轟音』について【2/4】

2020年2月15日(土)より池袋シネマロサにて単独公開ほか順次全国公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

片山享監督画像2 『轟音』場面画像4
――佐々木さんを含めて、まさに盟友という感じなのですね。片山監督は、安楽さんの監督作の『1人のダンス』やご自分の作品で、脚本も書かれていますよね。

片山 書いてくれる人がいないからです。いれば全然お願いしたいんですけど。でも脚本を書くのはめちゃくちゃ早いです。自分が早く読みたいんです。でも、書き方が正しいかはわかっていません。脚本の勉強はしたことがないんです。

――脚本作りの理論に基づいて緻密に組み立てるようなことをしていない?

片山 そうです。プロットがまず書けなくて、最初の設定だけ決めてババッと書いちゃいます。『轟音』も3時間ぐらいで書いてます。きっと役者をやっていることがいいんでしょうけど、どの役にも自分が投影されています。自分のこの部分とか、何かしらの自分が出ていて、そういう作り方をするので主人公が誰かわからないんです。最初に出てくるのが主人公とは限らない。いつもそんな書き方です。

――観客をミスリードさせるようなテクニックとしてそういう書き方をしているわけではなくて、自然にそういうふうに書いてしまうと。

片山 そうです。『轟音』の冒頭で、誠が近所のおばちゃんたちが噂話をしているところから逃げていくじゃないですか。その逃げている画にラジオのニュースの音声を被せるというのを書いたら、「あっ、これはパーソナリティの話いけるな」と思って、ひろみというキャラクターができていって。

――そうなんですか。誠たちがいる世界とかけ離れたパーソナリティの話がどこから発想されたのかとても不思議だったんです。

片山 あと、脚本作りに関して言うと、僕の台本ってすごく台詞が少ないんです。『轟音』は、海外での映画祭に向けた英訳が終わっているんですが、台詞の量が同じ尺の作品の3分の1か4分の1ぐらいで、圧倒的に少ないらしいです。20分喋っていないところがあるんですよ。なぜそういう書き方をするかと言うと、僕は人ってあんまり喋らないと思うんですよ。こうして店とかで人と会えば喋りますけど、家に家族といても、テレビを見ていてときどき一言ふたこと言うぐらいで、会話ってそんなにないんですよ。仕事中とか移動中なんてまったく喋らないし、生きているうちで喋らない時間のほうが長いはずなんです。だから僕の台本には台詞がないんです。生きている人をちゃんと撮りたくて、言葉はあとでいい。あえて書いていないわけではなく、喋らなかったから書いていないだけなんです。

――なるほど。それって俳優をされているから書ける脚本という気がします。台詞に頼らず映像だけで見せていくのは大変なことで、俳優の演技力を信頼していないとなかなかできませんよね。
『轟音』場面画像5 『轟音』場面画像6

片山 喋っていないというのは何もしていないわけではなく、無言という主張があるわけですよね。例えば喧嘩しているカップルって、遠目で見てもそれがわかるじゃないですか。喋っていなくても、動いていなくても、なんとなく「何かあったな、この2人」って。言葉というファクターがなくても、何か別のファクターが出ていてそれで十分に伝わる。我々は日常生活をそうやって生きているんですよね。人間ってすごいんですよ。そう考えると台詞がいちばん大切というわけではないなと。動いているだけ、ただいるだけでもそういう行動を取っているということで、何もしていないわけではない。その連続で僕は映画を作っていて、それをちゃんと撮れる撮影部と一緒に仕事をしているんです。だから人を撮らないカメラマンは苦手ですね。空気や構図が撮れても人が撮れないカメラマンっていっぱいいますし、監督でも、人を撮りたいというよりお話を撮りたいという監督が多いと思います。僕は人をないがしろにはしたくなくて、そこが僕の専売特許かなと思っています。

――そうですね。やっぱり俳優目線が出ているなと。

片山 役者というのはそれぐらい考えて現場に行く人たちなんですよね。そういう意味では監督よりも人間的には掘り下げが深くて。一方監督は、それが画にどう出るか?というところを見ることになりがちなんですけど、僕はそういう撮り方ではないんです。そこに「生きている人」がいるから物語が生まれると思っています。

――誠と浮浪者との緊迫したやり取りの間に、ひろみのパートが挟まれてムードがガラッと変わるのも工夫が凝らされているなと思いました。ひろみ役に太田美恵さんをキャスティングしたのは?

片山 ひろみ役にちょうどいい人を探していて。きれいでしっかりしていて、でもどこか不幸そうで、不倫していると聞いて「ああ~!」となる感じ。本当に失礼なんですけど、太田さんは絶妙じゃないですか。もともと知り合いだったのでぜひやってもらいたいなと。ひろみのような女性を僕もたくさん見てきましたけど、束縛からいくらでも逃げられるのに断ち切ることができない。ある種の誠実さがあって、でもまわりからは「何やってるんだよ」と見える人というか。だからこそ、そんな人が1歩踏み出すことが大事で、でもその1歩は人それぞれで。どんなカタチでも1歩を踏み出そうとするが、どうなるのか?という大事な役どころを担っていただきました。

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轟音 (2019/日本/99分/カラー/16:9/ステレオ/DCP)
出演:安楽涼,太田美恵,大宮将司,岸茉莉,中山卓也,柳谷一成,松林慎司,片山享,宮田和夫 他
プロデューサー:夏井祐矢・宮田耕輔 撮影/照明:深谷祐次 録音:マツバラカオリ
特殊メイク:北風敬子 サウンドディレクター:三井慎介 カラリスト:安楽涼
監督・脚本・編集:片山享
© Ryo Katayama Film
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2020年2月15日(土)池袋シネマロサにて単独公開
ほか順次全国公開

2020/02/13/17:42 | トラックバック (0)
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