インタビュー
アジアの純真/韓英恵

韓 英恵 (女優)

映画「アジアの純真」について

公式

2011年10月15日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー!
11月5日よりシネマスコーレ(名古屋)11月中旬より第七藝術劇場(大阪)他、全国順次公開!
K’s cinema公開中は、連日豪華ゲストによるトークショーを開催

拉致事件に憤る日本人が反朝鮮感情を高めた2002年。チマチョゴリを着た少女がチンピラの犠牲となり、その妹と、彼女を救えなかった少年とが「世界を変える」ために毒ガスを手に取る……。片嶋一貴監督の『アジアの純真』は物議を醸すこと必至の内容だが、白黒の映像で撮られたピュアな怒りは濁った社会に美しく善悪を突き付け、観る人の心を揺さぶってくる。ヒロインを演じたのは韓英恵さん。10歳のときに鈴木清順監督の『ピストルオペラ』(01)で鮮烈なデビューを飾って以来、名だたる監督たちのミューズとして活躍してきた彼女が、この作品では初めて自らのルーツと向き合い、渾身の演技をぶつけている。作品に込めた想いなどをうかがった。(取材:深谷直子

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韓英恵3――あと、この作品で物議を醸しそうな点としては、無差別殺人を描いているということもあると思います。その点に抵抗はありませんでしたか?

韓 私自身、無差別殺人ではないけど、昔は人をいじめたし、憎しみを憎しみで返すことを人間はしてしまうものだと思うんです。少なくとも私はしてしまったから、今まで生きてきた生きざまっていうものをこの映画でちゃんと刻んでおきたいなと思って。「ここまでやるなら」ってそういう感じでしたね。ヤケクソでやってました。

――そうですよね。確かに酷いことをやってはいるけど、やってるほうも辛いからなんだっていう悲愴な想いが伝わってきました。「同じことをされたんだから、みんな殺してもいいんでしょ?」みたいなセリフが切実なものに聴こえて。

韓 私自身が一時期人間不信みたいになっていて、本当に辛かったです。そういう中で、『誰も知らない』(04/監督:是枝裕和)とか『疾走』(05/監督:SABU) とか重い作品……、いじめられたりして孤独感がある役をよく演じていて、自分を反映していたんですけど、そんな中で今回は大きな転機になったんじゃないかと思います。

――役に自分自身を反映させながら、自分を客観的に捉えることもできたんでしょうね。デビューから10年経ちますが、女優をやってよかったなと思うことはどんなことですか?

韓 いろんな人と繋がれたことですね。私は今も静岡県に住んでいて、大学も静岡県なんですけど、そんな普通の生活とは全然別世界のことが体験できて、すごい貴重なことをしているなあと自分でも思っています。本当にみなさんには感謝してて。いろいろな人と話せたりとか、仕事をしてから映画が本当に好きになって、そういうので自分がすごく変われたことに、やっていてよかったなあと思います。

――10年も映画の世界にいても普通の女の子の感覚をちゃんと持ってるんですね。大学では何を専攻しているんですか?

韓 国際関係です。政治とか国際情勢とか、あとユニセフなど国際協力の勉強もしています。

――これから映画を通してますます文化交流を図っていただきたいですね。自分では映画を撮ったりしたいとは思いませんか?

韓 実は最近いろんな方から勧められたりしているんです。自分で映画を撮ると演技とかの面でもいろいろ勉強になるよと言われたりして、興味はありますね。でも大学もあるので、自分がもっとちゃんとしてからですね。もうちょっと待ってください。

――はい、ではちょっと期待してますね。女優については、逆にやっていて嫌なところっていうのはないんでしょうか?

『アジアの純真』3韓 今はないですね。昔は思ったこともあったんですけど。やっぱりこういう仕事をしていたら、学校とか友達と遊ぶ時間とか実家にいたいということだとかを犠牲にしなきゃいけないところもあるので、普通の人ができないことをやらせていただいているけど、普通の生活を恋しく感じることもありました。あとは撮影期間って辛いから。特にこの映画は、終わったら(女優を)やめようって思うぐらい、本当に辛かったんですよ。でもやっぱり私は単純なので、撮影が終わった後試写を観たりするとやってよかったなあと思うんですね。その繰り返しなんです、いつも。

――1本撮るたびに沈んでまた浮かんで。

韓 だから絶対クランクイン前とかになると落ちるんですよね。寝れなくなるし、肌は荒れるし。……でも、本当に自分が好きと思っている監督の作品に出会えているので、やっぱり素晴らしいことだと思います。

――先ほども少し名前が挙がりましたが、出演作品を見ると本当に錚々たる監督名・作品名が並んでいますよね。女優さんでは好きな方とか憧れている方はいらっしゃるんですか?

韓 永作博美さんと蒼井優さんとオードリー・ヘップバーンが好きです。オードリー・ヘップバーンの場合は生きざまが好きなんですよね。国際協力に熱心でしたし、そういうところがすごくいいなあと思います。

――ますます素敵な女優さんを目指していただきたいと思います。この映画はどんな方に観ていただきたいですか。

韓 いろんな方に観ていただきたいですね、本当にいろんな方に。観て、感じて、どうやったら世界は変わるかということを自分なりに考えて、考えてもきっと答えは出ないんですけど、それでいいと思うんですよね。考えるだけできっと何かがよくなる気がするし、そういう世界になってほしいなって思います。

――観たら「何かしないといけないな」って後々まで考えさせられると思います。繊細な部分も多いですよね。一方では「政治的なものにフタをしろ」的な風潮に対する反骨もあるとのことですし。

韓 あえて逆流を行くというところがあると思いますね。今はネットで叩かれることの方が多いですが、観てそういうふうに思ってくれる人が増えると嬉しいです。

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( 2011年9月8日 渋谷・ドッグシュガーで 取材:深谷直子

アジアの純真 2009年/35mm/108分/白黒
出演:韓 英 恵,笠井しげ,黒田耕平,丸尾丸一郎,川田 希,澤 純子,パク・ソヒ,白井良明(ムーンライダース),若松孝二
エグゼクティブプロデューサー:小曽根太,石川始 プロデューサー:木滝和幸,門馬直人 ラインプロデューサー:安藤光造
撮影:鍋島淳裕 照明:堀口 健 録音:臼井 勝 美術:佐々木記貴 音楽:ken sato
編集:福田浩平 VFX:柳 隆 助監督:茶谷和行 スケジューラー:江良 圭
配給:ドッグシュガームービーズ 企画・制作プロダクション:ドッグシュガー
製作:ドッグシュガー,ロード・トゥ・シャングリラ,HIP
脚本:井上淳一 監督:片嶋一貴 (C)2009 PURE ASIAN PROJECT 公式

2011年10月15日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー!
11月5日よりシネマスコーレ(名古屋)11月中旬より第七藝術劇場(大阪)他、全国順次公開!
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2011/10/09/17:35 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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