佐藤 寿保 (監督) 映画『華魂 幻影』について【4/5】
2016年4月30日(土)より、新宿K’s Cinemaにて公開
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――一方、イオリさんをはじめとする若い女優さんの体当たり演技も見事でした。佐藤監督の作品に出るというのは、元々ヌードとかに対する覚悟はできているっていうことなのでしょうけど。
佐藤 そうですね。『名前のない女たち』(10)からは、オーディションをやって主役や準主役を選ぶことにしたんですよ。というのは、大手のプロダクションだと題材そのもので拒絶してしまうんですよね、「女優に変な色が付いてしまう」とかの心配をして。何を言ってるんだい!ってね。役者自身は「出たかった」と言っているのを小耳にはさんだりしたので、それだったらオーディション形式にすれば、事務所どうのこうのではなく本人がちゃんとした気構えで来るから、現場的にもノってできるだろうと。前作の『誕生』でも桜木(梨奈)と島村(舞花)はオーディションで選んで正解だったなと思っていますから。
――今回のイオリさんは女優という感じもしないような、本当に透明感のある方でした。
佐藤 彼女は芝居経験はほとんどゼロだったんだけど、なんか毒されていないというか、素朴なんですよね。関西のほうの出なんだけど方言が抜け切らなくて、いまどき珍しいぐらいのノンビリさがあるんですよ。それでいて結構度胸は据わっているという、そこらへんがまた面白くてね。あと、観てもらえばわかると思うけど、肉体がすごいですからね。ボーン!ってね(笑)。オーディションにはもっと芝居ができる女優もいたんだけど、今回は役柄が“謎の少女”という設定なので、芝居というよりも存在そのもの、本人が持っているものを映したほうが魅力が出るんじゃないかと思って選びました。
――監督の次回作にも出演しているとのことですよね。
佐藤 『眼球の夢』(16)という作品でもちょっと出てもらっています。今回の作品で映画に魅力を感じたらしくて、撮影中は自分の出番が終わっても終電間際まで残って現場を見ていたりしてね。最後に単独で彼女のシーンを撮ったんだけど、帰り際に泣いていたというのを助監督から聞いて。「映画が終わるのが寂しいから」って。そういう感性を持っている女の子ってなかなかいないよ。子供のように「楽しい時間がこれで終わりなんだ」と寂しがる素直な感性というかね。
――クライマックスの映画館での狂乱シーンも前作以上にカオスでした。
佐藤 観客役をやっているのは『華魂』第1弾から出てもらっている役者連中とかで、もう“華魂隊”ですな(笑)。“華魂”っていうキーワードによって膨らむものがあってああいう芝居ができるんです。エキストラではああはならない。一応芝居なんだけど半分はそれぞれの本質的な部分も垣間見れるというかね。何人かは指示を出して、あとは泳がせて、グループ分けして「はい、こっち班行くよ!」って撮って、編集でいいところを拾っていく感じですね。カメラもハンディで撮っていて、いつの間にか天狗さんが縛られているんで「あれ!カメラこっちだ!」とかね(笑)。
――(笑)。沢村の元恋人役の川上史津子さんもどんどんすごいことになっていきましたね。
佐藤 “えろきゅん”どころじゃないよ。歌人があんな芝居できるなんてねぇ(笑)。
出演:大西信満 イオリ 川瀬陽太 愛奏 吉澤健 真理アンヌ 三上寛 他
監督・原案:佐藤寿保 プロデューサー:小林良二 脚本:いまおかしんじ 音楽:大友良英
共同研究:東京工芸大学 制作・配給・宣伝:渋谷プロダクション 製作:華魂プロジェクト
© 華魂プロジェクト
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