インタビュー
映画「オードリー」「SeeYou」/勝又悠監督

勝又 悠 (監督)

映画「オードリー」「SeeYou」について

『オードリー』 オードリー公式サイト
『See You』 See You公式サイト
両作共通 公式twitter 公式Facebook

2012年6月9日(土)より、二作品同時/全国順次公開

オードリー/STORY わかってるなりの想い方
大森優子は郊外に住む18歳。 文化祭を目前に控えた高校3年の秋。 同じクラスの石塚絵里と小浜志保の仲良しグループで過ごすことが楽しい毎日。 優子は親友の二人にも打ち明けていない、密かな片思いをしていた。 相手は同じクラスの遠山健太。 しかし、予想外の展開が起こる。 絵里が遠山のことを気になると言い出したのだ。 さらには数日後の文化祭で告白するとまで言う。 内心気が気ではないが、口では絵里の恋を応援すると言ってしまう優子。
そんなある日、絵里からとんでもない頼みごとを持ちかけられた。 「文化祭までの間、遠山と付き合って、彼の好みをリサーチして!」 絵里と志保に押し切られ、優子は思いもよらぬ形で遠山と付き合うことになる。 期間限定の恋が始まった。
See You/STORY 君と、君の制服が、本当に好きだった
深夜の工場勤務業で生計をたてる荒井昌一。 世間からはじかれたような錯覚の中、 後戻りの出来ない年齢になった自分に対して半ば諦めを感じている。 昌一には、コンプレックスがあった。 それは、制服を着た女子としか向き合えないというコンプレックス。 昌一は、ある日の真夜中衝動的に女子高生を車に乗せ、拉致してしまう。

勝又監督について

勝又悠監督2――映画監督を志すきかっけは何だったのでしょうか。

勝又 専門学校へ行っていたのですが映像系ではなく文学系の専門学校でした。 三島由紀夫の本を読んで討論会をしたりするような授業の連続で入学後すぐに付いて行けなくなり すぐにサボるようになりまして、その時にずっと映画を見ていました。 なんで映画かっていうと、座っているだけで二時間時間をつぶせるからです。そんな軽い理由でしたが 「バトルロワイアル」に衝撃を受け、次の日に中古のビデオカメラを買って、仲間連中に電話をして「俺、映画撮るわ!」って言っていました。 処女作は「四ツ葉のクローバー」というタイトルで、男女仲良し5人組の話の初恋の話です。 ヤンキーとギャルしかキャストがいないので、初恋感がまったくなく散々でした。

――女子高生あるいは制服が描かれている作品として、近年では山下敦弘監督『リンダリンダリンダ』、入江悠監督『劇場版 神聖かまってちゃん~』の二階堂ふみなどが個人的には印象深いのですが、勝又監督お気に入りの女子高生映画などはありますか。あるいは、映画を作るにあたり、影響を受けた監督や作品があれば教えて下さい。

勝又 庵野秀明監督の「ラブ&ポップ」の影響が一番大きいと思います。 今でもたまに見返します。大傑作だと思います。

――監督が過ごした高校時代の女子高生と、現代の女子高生では何か大きな違いなどは感じますか。

勝又 それが全く感じません。あの頃の同級生たちが時間を止めて街を徘徊しているような印象です。 僕が高校生の頃は、ルーズソックス全盛期だったので ルーズと紺ハイソの二枚履きの子を見るとなんとなく懐かしい気分になりますね。 というか、派手なギャルだらけの環境で育ったのでそういう子を見ると、映画を撮りたくなります。 原付バイクに二ケツした女子高生がラーメン屋に入っていたりとか、そういう風景を忘れたくないです。

――映画太郎@テアトル新宿で上映された『It’s a small world』(2012年)にも象徴的だったのですが、初期作品と近作の変化として、「画面の外」の描写が挙げられると思います。トークショーでは、「良くも悪くも“計算”をするようになった」と仰っていましたが、具体的にはどのような意識の変化がありましたか。

勝又 当然の事ですが、お客さんの事を第一に考えるようになりました。 見せない事で生まれる余白を大事にするというか、お客さんが意見を考えられるスペースを作るようになりました。 というか、これを今までやってこなかった方が問題です。すいません。

――今後、新たなジャンル、極端に言えば“男子”の映画など、撮る予定はありますか。

勝又 撮りたいです。が、いただくオファーが99.9%女性が主人公の映画なのでやるとしたら自主制作でもやりたいです。 男気溢れるパンチの効いた家系ラーメンのような映画を作りたいです。 血と暴力、バイオレンス!みたいなやつを。

――勝又監督が映画を製作するにあたり、一番譲れないものは何でしょうか。

勝又 難しいですが、初めて映画を撮ったあの日の気持ちに嘘をつかないようにしています。 初めてファインダーを覗いたときに映っていたあの景色を傷つけるような事はしたくないです。 あとはやっぱり地元ロケです。神奈川県の南足柄市が故郷なんですが、撮影は全部地元で行いたいです。

『オードリー』について

――まるでドキュメンタリーを観ているかのような、自身が高校生の頃に戻ったかのように感じられるぐらい教室の空気感や女子の会話がとてもリアルでした。現場では役者さんたちに自由に任せる部分が大きかったのか、それとも脚本に忠実だったのでしょうか。

勝又 難しいのですが、会話の内容は脚本に忠実ですが語尾や発声の仕方などはある程度任せました。 それよりも一番こだわったのは、梶原ひかりさんが演じる石塚絵里の自転車のハンドルです。 鬼ハンといって、ヤンキー仕様にしました。

――主人公の二人はもちろん、優子の両親、教師の山田、と登場人物たちの「視線」がひじょうに印象的でした。演出されるうえで特に意識はされていたのでしょうか。

勝又 大人は子供を直視するけど、子供は大人を直視しない、という事を頭に入れました。 子供は子供たちのカテゴリの中で見つめ合い、世界を形成する。 そこに大人は入る余地はないと思っているからです。

――『はい!もしもし、大塚薬局ですが』に続き、女の子の味方、ある種メンターとも呼べる大人の存在が効いていると思います。今作の教師・山田は、映画を撮りながら女子高生たちを見守っているといえる勝又監督御自身の投影のように感じたのですがいかかでしょうか?

勝又 「こういう先生がいたらきっと楽しいだろうな」という理想を込めてああいうキャラにしました。 お調子者で適当な事ばかり話すところなどは、今思ったら僕に似ている気がしてゾッとしています。

――終盤、優子と遠山が図書室で二人きりになる、引きの構図からの長回しは私の一番好きなシーンでした。監督は、この作品で強いて挙げるとすればどのシーンがお気に入りですか。あるいは撮影中、印象深かったでしょうか。

勝又 お気に入りは、携帯電話が鳴って部屋中探すシーンです。 男は絶対にあの姿を見る事が出来ないじゃないですか。電話をかけている方なので。 コール音の向こう側で、女の子がああやってあたふたしていたらいいなって思います。

『See You』について

――『オードリー』とは雰囲気が大分異なる作品ですが、作品を作るきかっけは何かあったのでしょうか。

勝又 セーラー服の襟が折れた女子高生が、渋谷のスクランブル交差点を一人で逆流する姿を見たのがきっかけです。 鳥肌が止まりませんでした。 あと、今まで女子高生の輪の中の視点で映画を作っていましたが、それは僕の中で「オードリー」で完結したつもりでしたので 次は、輪の外から見た女子高生を撮りたかったんです。

――男性がメイン、ロードム-ビー、という点で過去作品『次の、夏』(2012年4月、映画太郎@テアトル新宿にて公開)との共通性を感じましたが、意識されていた点などはありましたか。

勝又 いえ、まったく意識はしていませんでした。 ロードムービが好きなのは、都会の窮屈な景色から郊外の解放された景色に移り変わる瞬間が好きだからだと思います。 小田急線の向ケ丘遊園から登戸みたいな。

――「制服とは武器である」この言葉がまさにピッタリな作品だったと思います。ここまで監督のこだわりをさらけ出すような作品を撮ることは、かなりの勇気が必要だったのではないでしょうか。

勝又 もう何を言われてもいいという決意がありましたし、常に遺作にするつもりで撮っているので迷いはなかったです。 もうこの撮影時(2010年10月)はこれさえ撮れればいつ死んでもいいという想いがありました。 現場で女性スタッフに散々白い目で見られましたが今はいい思い出です。

――「食事」が今作品では、二人の関係性の変化を表す要素としてもひじょうに効果的に演出されていたと感じました。

勝又 男女の関係ってまずは食事から始まるじゃないですか? 「ご飯行きましょう」とか「飲み行きましょう」とか。 好きな異性と食事を共にするってすごく幸せな事だと思うんですよ。 もしかしたらその先にあるキスとかハグとかセックスよりも幸せな行為なんだと思います。 なので恋愛における描写は全部食事に置き換えました。

――今作では主演のお二人以外は勝又監督作品の常連キャストで固められたわけですが 特に思い入れのある役はありますか?

勝又 それぞれ思い入れはありますが、一番といったら 近藤圭子が演じた小塚宏美という役です。 この役は彼女でないと演じきれないと思いました。 不器用で真っすぐで、言葉遣いは悪いけれど誰よりも家族を想っていて。 素直になれない少女が見せる一瞬の優しさを撮りたくてこの役を作ったようなものです。 強気な彼女がふと見せる寂しげな表情に撮影中何度もぐっと来ました。

二作品とも、非常に心に残るものが大きい作品でした。私自身、高校生の頃にやり残したことを、二作品を通して再発見したような気がします。懐かしさだけではなく、あの頃憧れていたものを映像として目の当たりにし、どこか恥ずかしいような、嬉しいような、いろんなものが入り混じった気持ちになりました。勝又監督の作品をこれからも追いかけていきたいと思います。(取材・ライター 石井達也)
オードリー 2010年/ビデオ/67分/カラー 配給:キュリオスコープ 公式
脚本・監督・撮影:勝又悠 出演:笠原美香,梶原ひかり,暮浩平,小田島渚,水野祐樹,上村公臣代,真砂豪,葛上昇悟

See You 2012年/ビデオ/113分/カラー 配給:キュリオスコープ 公式
監督・脚本勝又悠 出演:園部貴一,清瀬やえこ,桜井淳美,近藤圭子,前川桃子

2012年6月9日(土)より、二作品同時/全国順次公開

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2012/06/08/00:03 | トラックバック (0)
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