中村 達也 (俳優・ドラマー) 映画『野火』について
2015年7月25日(土)より、ユーロスペースほか全国公開
公式サイト 公式Facebook (取材:深谷直子)
――ダイエットはかなりがんばられたそうですね。
中村 なんせ日焼けしてコケコケになんなきゃいけない。でもやせると言っても力石徹のようにがむしゃらにはやってないよ。他の役者さんたちはみんな結構絞ってきていたけど。俺はとにかくバンドの練習に行くときに自転車で行くようにして、上半身裸でひげも伸ばして、顔を出しとかなきゃいけないから鉢巻きをして。
――えー、怪しい(笑)。
中村 そんでボーッとして刺青バーンと出してママチャリに乗ってたら、方南町の交番からお巡りさんが飛び出してきて、「勘弁してくださいよ~」って(笑)。
――あははは。お巡りさんも困っちゃう感じで(笑)。
中村 「上着着てください」って言われて「おお、いいよ」って。俺もそこで恥ずかしくて「役作りなんです」とも言えず(笑)。スティックとか突っ込んであるし、完全に高円寺から来たイカレたバンドマン丸出しだなって。
――あはははは。真面目に役作りしてるのに……。
中村 フフフ。そんなダイエット期間が2ヵ月ぐらいあったかな。撮影が9月の終わりぐらいからで。最初は深谷(埼玉県)からで。
――深谷では仕掛けの要る戦闘シーンなどを撮ったんですよね。塚本監督はこの映画を密室劇として撮ったとのことで、見えないところから弾が飛んでくるような描き方をしているんですが、お芝居が難しかっただろうなと思います。特別なセットもない普通の山や森の中で演技するというのも達也さんにとっては初めてのことですよね?
中村 俺は何でもそうなんだけど、初めてなんですけどね(苦笑)。分からないまま飛び込んで、それが一体どういう狙いのものなのかをあとから知るっていう。陽が当たった普通の自然の中でいきなり弾が飛んでくるとかいうのを深く考えずやっていたけど、できあがった映画を観てみんながああだこうだ言っているのを聞いて「ああ、そうか」って。すごくきれいな自然が映っていて、そこで人間の心理だけが「もうダメだ」とか「生きていたい」とか荒れ狂っているんだけど、自然はそのままあって、おてんとさまは昇っていって。
――そういう対比を描いていたんだなと。
中村 そう、それにあとから気付く。その後『水の声を聞く』(14)という映画を観て、山本政志監督が昔撮った『ロビンソンの庭』(87)の評論を読んだら、それも自然がものすごくきれいに撮られていて、その中で織りなす人間の……とかいうことが書いてあって、ああ、そういう映画の撮り方というか感じ方というのがあるんだなと、そこでまた思った。
原作:大岡昇平「野火」
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也 監督・脚本・編集・撮影・製作:塚本晋也
配給:海獣シアター © Shinya Tsukamoto/海獣シアター
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