アランクリター・シュリーワースタウ (監督)
映画『ブルカの中の口紅』について【2/4】
第29回東京国際映画祭「アジアの未来」部門上映/国際交流基金アジアセンター特別賞受賞作品
東京国際映画祭公式ページ (取材:松岡 環【アジア映画研究者】)
ヒンドゥー教徒の2人のうち、リーラーのパートにはセックスシーンが多い。
「彼女の場合、性的な欲求を隠さないんです。愛する相手に対して積極的で、相手をまっすぐに愛していく。セックスシーンが多いというよりは、彼女のキャラクターに合わせた表現なんです。一方で気に染まない相手と婚約させられるわけですが、その相手もなかなかいい青年です。性的欲求をあからさまに出すリーラーのような女性に対しては、我々は眉をひそめます。女性はいつも性的な欲求を抑えていて、性的なことを口に出すのは男、という役割になっている。女性が性的欲求をあらかさまに出すとすぐに非難されますが、男性でも女性でもいろんな人がいますし、それぞれに持っている基準もさまざまです。リーラーはこういう人だ、というのをそのまま描いただけなんですが、彼女は愛する男性がいながら別の人と婚約し、その両者の間で混乱をきたしてしまう。そのどちらの男も、彼女にはふさわしくないんですけどね。」
ウシャーは近隣の人から「おばさん」と呼ばれ、慕われている。
「ですが、未亡人の彼女は、生きているとはとても言えない。昔はこういう女性をよく見かけたものですが、彼女たちを一つの型にはめて見る必要はないんです。私の試みは、女性たちにもっと自己を噴出させることです。女性はずっと男性の支配下に置かれてきました。その状況に挑戦して、女性たち自身が語りたいストーリーを語る必要がある。我々女性は生身の人間です。女神ではないし、娼婦や悪女でもない。私たちは平凡な普通の人間なので、平凡な普通のお話を語ろう、そして、互いを裁かないようにしよう、という意図が私の作品には込められています。」
4人のヒロインは、最後には不都合な真実が暴かれてしまい、窮地に陥る。
「でも、アンハッピーエンドではないでしょう? もちろん、みんないろんなことがバレてしまいますが、4人はそこで手を結び合います。ラストは、鍵は自分自身の心である、と4人が気がつくんですね。ですから、これから4人は互いに助け合いながら、何かをやってくれそうだ、とラストは示しています。もちろん、困難は待ち受けているでしょうが、4人は力を合わせて何かをやり、次の朝には確実に何かが変わっている。4人が手を結び合った、そこで何か答えを見つけるに違いない、と私は思います。どんな答えが出るにせよ、彼女たちが選択をしたことは間違いないのです。彼女たちはそれまで辛い目にあってきたけど、最後は笑い合っているでしょう? 『風と共に去りぬ』ではありませんが、スカーレット・オハラが言ったように、“明日はまた別の日が来る”のです。」
監督・原作:脚本:アランクリター・シュリーワースタウ
プロデューサー:プラカーシュ・ジャー 共同脚本:スニール・カンワル
ダイアログ:ガザル・ダーリーワール 撮影監督:アクシャイ・シン 編集:チャールー・シュリー・ローイ
サウンド・デザイナー:ラーフル・バドウェールカル
出演:ラトナー・パータク・シャー、コーンクナー・セーン・シャルマー、アハナー・クムラー、プラビター・ボールタークル
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