下向 拓生 (監督) 映画『センターライン』について【2/5】
2019年4月20日(土)より池袋シネマ・ロサにて公開中
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――企画コンペに落ちて奮起して、というのは『カメラを止めるな!』(17)を彷彿させますね。自主でエンターテインメント作品を作るのは本当に大変だと思いますが、よく地道に進めていきましたね。
下向 火事場の馬鹿力ですね。今同じことができるかと言ったらできないかもしれないですけど。
――資金を自分で出すのも大変なことだと思います。
下向 大変でしたね。『N.O.A.』が映画祭で受賞した際の賞金などもあったんです。とはいえ、映画祭に行くのにももちろんお金がかかるので、もらった賞金をまるまる予算として計上できるわけではないんですが、気持ちとしては全部この次回作につぎ込む感じで。
――ロケ地にリアリティがありました。裁判所のシーンはどこで撮ったんですか?
下向 大学の法廷教室です。だからよく見ると本当の裁判所の法廷とは違うところもあるんですけど、お客さんには許してもらえています。
――普通の観客には気にならないところだと思いますし、むしろ裁判に関しては勉強になることが多かったです。検察官が検察事務官とペアを組んで行動するというのも知らなかったです。
下向 検察事務官という役職があるのは以前から知っていたんですけど、今回は人工知能と人間の関わり合いの話なので、人間同士の相棒についてはあまり膨らませないでおこうと最初は思っていたんです。でも今回検察庁にも取材に行って、検察官と検察事務官は常に行動を共にするものだとうかがったので、これはちゃんと描かないとな、と思って大鳥というキャラクターが作られた感じですね。
――とても充実した面白い脚本になりましたが、尺は67分と、長編としては短めですね。元々これぐらいの尺で考えていたんですか?
下向 そうですね、僕は『ソーシャル・ネットワーク』(11)が好きで、インタビューを読んでいたら、あの作品の脚本は元々3時間ぐらいになる分量なんですが、早口で台詞を言ってあの尺にしたということを言っていたんです。とても頭のいい人たちの話なので会話が早口になるのはわかるし、すごく面白いなと思って、それをやってみたいというのが最初のコンセプトとしてありました。裁判が早口で行われることは傍聴して知っていて、そういうまくし立てるようなテンポ感のものを作りたいなと思っていました。枚数で言うと80分ぐらいになる脚本なんですが、早口で言うことによって67分になったという感じですね。
――なるほど。『ソーシャル・ネットワーク』って確かに台詞の速さが話題になりましたよね。
下向 はい。余談なんですが、『ソーシャル・ネットワーク』をちょっと目指して2016年2月に企画を立てて、その年の7月に『シン・ゴジラ』(16)が公開されたんですよね。それを観たときに「あ、これは俺がやりたかったことだ!」って(苦笑)。これは早く映像化しないと時代遅れになるぞと思って、急いで作ったような感じです。
――(笑)。早口にすることで情報が凝縮されてまた観たくなるという、『シン・ゴジラ』と同じ効果がありました。人工知能が人間に取って代わって仕事がなくなっていくこととか、研究者の研究資金が打ち切られることとか、エンターテインメントの中に今の社会の問題もにじみ出てきていると思います。
下向 僕自身もメーカーのエンジニアなので、技術の発達と、それが人に受け入れられることとのバランスは難しいなと思うんですよね。受け入れられなくて衰退してしまうのは残念なことなんじゃないかなと思っていて。それを明確にテーマとして入れようと思っていたわけではないんですけど、何となく作っているうちに入り込んでしまったかもしれないですね。単純に人間じゃない生き物とコミュニケーションするという作品が好きなので、こういうストーリーになりました。
出演:吉見茉莉奈,星能豊,倉橋健,望月めいり,上山輝,中嶋政彦,一色秀貴,近藤淳,青木謙樹,松本高士,もりとみ舞,
一髙由佳,青木泰代,いば正人,藤原未砂希
監督・脚本・編集:下向拓生
撮影監督:JUNPEI SUZUKI セカンドカメラ:山川智輝、村瀬裕志 録音:上山輝
モーションアクター:木村翔 音楽:ISAo. 主題歌:「シンギュラリティ・ブルース」小野優樹
ロケーション協力:いちのみやフィルムコミッション協議会/愛知県あま市企画政策課/名古屋大学
配給 © プロダクションMOZU
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