インタビュー
ライフ・イズ・デッド/菱沼康介監督

菱沼康介 (監督・脚本)

映画「ライフ・イズ・デッド」について

2012年2月11日(土)から、シネマート六本木にて、レイトショー上映
公開初日 2月11日(土)に、出演者舞台挨拶開催。
2月13日(月)に、菱沼康介監督、原作の古泉智浩さんによるトークショー
2月17日(金)に、音楽担当のアイシッツ、菱沼康介監督、特別ゲストによるミュージック&トークショーを開催。詳細は公式サイトにて。

ゾンビ漫画の金字塔とも言われる古泉智浩著のカルトコミック『ライフ・イズ・デッド』が実写映画化され、2月11日より公開される。今回のインタビューは、第一回の試写で鑑賞した後、そのゾンビ愛あふれる内容に感激し、試写会場で挨拶していた監督の菱沼康介氏に、その場で申し込んだ。
菱沼氏からの「映画館で映画を観たあと、友人同士で、喫茶店にでも入った感じで行いましょう」という提案を受けて、数日後に、新宿バルト9のロビーで待ち合わせをし、10Fの喫茶店にて、行った。 (取材:わたなべりんたろう

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『ライフ・イズ・デッド』――原作と変えている部分がありますが、変えたのは、そういった意図を強調するためということですか?

菱沼 そうです。なんといっても、原作は、どうしても強烈な古泉テイストが色濃くある上、漫画独特の表現も多いので、より現実に近づける方向で脚色を加えました。内容によりますが漫画を漫画のテイストを残したまま実写化するには、時間、予算と様々な技術、美術や俳優やVFXなどなどが必須です。リドリー・スコットさんも「漫画の実写化は、とても難しい」と発言してます。リドリーさんは直接、漫画原作の実写映画を作ったことはないですが。ただ『ブレードランナー』を『ヘビーメタル』(※アメリカのSFコミック。アニメ映画化もされている)の実写版のようなものと言っていて、その時の発言です。脚色の最初の発想について言えば、『ライフ・イス・デッド』の原作漫画では、父と息子の関係についての物語が中心になってます。これ、アメリカ映画の重要なモチーフなんですが、ここを日本なので母の部分も強くしてみようとしたんです。それを進めている途中で、あ、これはカフカの『変身』のゾンビ版なんだ、と気づいたんです。ある朝起きたら、グレゴール・ザムザは突然ゾンビになっていた、ってわけです。それから、兄と妹の物語にアレンジする方向を見つけて一気にまとまりました。漫画というより、小説からの実写化という考え方にして、一度還元して、構成していきました。

――この映画からは、日常が非日常に侵食されつつ、今度はその非日常が日常になっていく感じを受けたのですが、カフカの不条理な感じは近いですね。

菱沼 そうですね。慣れてしまうというか。“しょうがない”というのがキーワードにしていて、登場人物の多くは、納得できない自分をしょうがないからというあきらめで、納得させて先に進む。ただ、それは非日常に対抗する術ではあるんですが、心に麻酔をかけるというか、心を麻痺させていく。現在の日本が抱えている状況にそういう部分を強く感じます。だが、それでいいのか?麻痺させないためには何が必要なのか?カフカの作品にはそういうことに対する告発的な部分があると思います。それと、虫という要素は、遅いゾンビにも合うな、と思ったんですよね。虫って怖いじゃないですか、ザムザはかなりでかい虫ですが。虫って、あの小ささでも、一大事になる。毒とかに気をつければ、まぁ、やられることはないのに、異常に怖がる人は怖がる。ゴキブリが飛んできたら、飛び退きますよね。でも、覚悟さえ決めたら、殺虫剤もあるし、新聞紙やスリッパで一撃です。でも、一匹見たら100匹いる気がしてくる。じゃあ、バルサンするかというとそこまでする人はマレです。せいぜい、出てきた辺りを少しキレイにしたりするぐらいで。ああ、怖いと思うけど忘れてしまう。だって、時折出てきて、驚く以外には害を感じないから。忘れることで怖くなくなる。ホラー映画もそれに近いなって思ってるんです。時折出てくるゴキブリ。たぶん、人って、美しい蝶を思い出す時間よりも、あの時のゴキブリに対処した話の方が頻繁にするでしょ。まぁ、ネズミとか、スズメバチとかになってくると、対処はまた違うんでしょうが。

――ゴキブリじゃなくても、美しい蝶でも怖がる人は怖がりますよね。

菱沼 でも、蝶によく似た蛾は怖いですよね。些細な違いなのに(笑)。先ほどのゾンビ愛という言葉があるとしたら、あの造形美に惹かれているんです。ゾンビは美しいな、と思ってしまう。もちろん、気持ちも悪いんですけど、悲しい美しさというか。『星の王子さま』に「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているから」という一節があるんですが、あれはあの物語の重要なメッセージなので、なんども言い換えて出てくるんです。そのうちの一つに「廃墟が美しく見えるのは、どこかに宝物が隠されているから」というのも出てくるんですね。ならば、ゾンビは人間の廃墟だろう、と。で、どこかに宝物があるとしたら、それは、なんだろうか、と。それをロメロさんは、知性とか復讐心とか習慣、親愛とか、いろいろな形で描いていますが、僕は、今回は、それを人の業としてとらえたんです。で、その業を肯定したいな、と思ったんです。なんというか、「ゾンビが美しいのは、どこかにイド(※精神分析学で無意識の層にある人間の本能的衝動。普段はエゴやスーパー・エゴによって抑制されている)があるから」という感じです。

『ライフ・イズ・デッド』3――その部分を、ゾンビになっても、まだ会社に行こうとするゾンビやセックスを続けるゾンビで描いているんですね。

菱沼 セックスというかエロに関しては、原作でもかなり重要な要素になっていて、主人公はセックスでアンデッド・ウィルス(※原作の設定。ゾンビになるウィルスのこと)に感染するんですね。生命を作る行為で死に至る病にかかってしまう。この相反する要素を入れていくのは、今回の取り組みのひとつでした。詳しく言うと映画を見る楽しみが減ってしまうかもしれませんので、口をつぐみますが。僕は、映画を見たら、発見をしてもらいたい、と思っているんです。観た人が持って帰ってもらうお土産のひとつとして。そのために、映画にいろいろと仕掛けを入れるのが好きなんです。くだらないことから、重要なテーマやメッセージまで。ほかの映画の引用なんかも、そのひとつだと思っているんです。それを物語と相互作用するように入れるのに、いつも苦心してます。特に、今回は、風刺と皮肉の入れ方をあからさまにも、ささやかにも入れています。なので人によって反応する部分がだいぶ違うようです。 僕が多面的で寓話的な映画を好んでいるので、そのせいでしょうね。

――私は、TVのニュースのシーンがその部分を表していると感じました。ロメロの引用ですか?

菱沼 ええ。ロメロさんのやっている、説明を堂々とテレビの中でやりつつ、それ自体を批判する、ある意味での正攻法を引用させてもらいました。ただ、サブ・ストーリーとしても楽しめる感じにしてます。

――なるほど。では、映画の内容については観た人に発見してもらうということで、話題を変えて、音楽についてきかせてください。音楽も重要なモチーフなっていますよね。原作にもある要素ですが、それもこの原作を実写化する要因だったんですか?

菱沼 映像と音楽の掛け算で生まれる、それぞれだけではあり得なかった何かが映画だと思っています。
この場合の音楽はメロディだけではなく、空間に存在する音のことです。大きくいえば、映写機の回る音や映画館で聞こえる笑い声や泣き声もまた映画の一部だと考えています。ま、過度なおしゃべりや騒音は困りますが(笑)。だから、音楽には本当はすごく凝りたいんです。ですが、さまざまな都合、まぁ、大体は予算ですが、なかなか突き詰めることができないことも多い。ただ、その分、それを埋めるように今できることの全霊を注ぎ込んでいます。だから、音担当には、特に音楽部には苦労かけまくりです。

――音楽の担当は前作と同じですね。

菱沼 アイシッツは自主制作をしている頃から、ちょくちょく音楽を提供してもらっていて、『最期のチャンス』という作品で全面的に音楽をやってもらってから、これで三度目になります。とにかく、僕は注文が多いので、よく応えてもらっていて、まったく頭が上がりません。

――どういうプロセスを経て、音楽をつけていくのですか?

『ライフ・イズ・デッド』4菱沼 まずシナリオの時点で、イメージを伝えて、映画のイメージになる1曲を作り始めてもらいます。で、編集に入ったら、つなぐ前に、その曲を聴きつつ、調整を加え、今回のイメージしている既存の曲をだいたい50曲ぐらい参考として聴いてもらい、参考にしたい映画の音楽の使い方を伝えて、がっつり話し合います。

――どのような作品を参考に?

菱沼 今回は、既存曲では、パールジャム、プライマル・スクリーム、アタリ・ティーンエイジ・ライオット、銀杏BOYZ、ナイン・インチ・ネイルズ、プライマス、LTJブケム、ルロイ・アンダーソン、ワイルドハーツ、ザ・フー、ザ・クラッシュ、ノー・スモーキング・オーケストラ、グスタフ、トクマルシューゴ、スケルトンキー、レディオヘッド、パフューム、ツジコノリコ、木村カエラ、CHARA、フランスギャル、芸能山城組を聴いてもらいました。サントラを含め、映画では『AKIRA』、『脳内ニューヨーク』、『パラノイドパーク』、『コンテイジョン』、『ゾンビ』、『ギルバート・グレイプ』、『サスペリア』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『アイドルを探せ』、『さらば青春の光』などを材料にしています。音楽づくりと並行して、まずはテンプミュージックの入ったバージョンを編集します。それを見てもらい、作ってもらった曲と比較して、少しずつ交換したり、テンプミュージックに戻したりしながら、また編集を加えていきます。編集に合わせて、音楽を調整してもらい、シーンに音楽を、またはその逆をしながら、音楽を入れていきます。効果音もある程度入れますね。ある曲は、5、6回は直してもらっています。それでも、効果音との兼ね合いもあるので、MAでちゃんとした効果音を入れてから、もう一度、楽器を外したりとか、直してもらっています。特に今回は耳障りな音を探したので、調整に苦心しました。

――出てくるアイドルソングもそうなんですか?

菱沼 アイドルソングは、歌詞も映画の内容に合わせて、全部作っています。

――『ロンドン橋落ちた』などの民謡も印象的に使っていますね。

菱沼 フォーク、童謡、お経、ゴスペルとか、もっといえばヒットソングを入れることで、現実世界と物語世界に相互リンクをすることが出来るのではと考えています。記憶の池に手を突っ込んでかきまわすような感覚というか、そういう感じを出したいんですよね。

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ライフ・イズ・デッド  2011/日本/カラー/94分/
原作:古泉智浩「ライフ・イズ・デッド」(「漫画アクション」連載/双葉社刊)
監督・脚本:菱沼康介
企画:村田亮 エグゼクティブプロデューサー:男全修二,佐伯寛之,阿久根裕行 プロデューサー:大垣修也,谷口広樹,堀尾星矢
撮影監督:辻智彦 美術:寺尾淳 録音:山田幸治 スタイリスト:EIKI ヘアメイク:コウゴトモヨ 特殊メイク:石野大雅
助監督:金子直樹 VFXスーパーバイザー:磯金秀樹 宣伝プロデューサー:中村美絵 製作プロダクション:アールグレイフィルム
配給:アールグレイフィルム 宣伝:ポニーキャニオン
出演:荒井敦史,ヒガリノ,川村亮介,阿久津愼太郎,しほの涼,永岡卓也,中島愛里,円城寺あや,小林すすむ
©2011 『ライフ・イズ・デッド』製作委員会 All Rights Reserved. 公式

2012年2月11日(土)から、シネマート六本木にて、レイトショー上映
公開初日2月11日(土)に、出演者舞台挨拶開催。
2月13日(月)に、菱沼康介監督、原作の古泉智浩さんによるトークショー
2月17日(金)に、音楽担当のアイシッツ、菱沼康介監督、特別ゲスト
によるミュージック&トークショーを開催。詳細は公式サイトにて。

2012/02/08/23:56 | BBS | トラックバック (0)
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