城定 秀夫 ( 映画監督・脚本家 )
映画『タナトス』について
2011年9月10日(土)より、渋谷ユーロスペースにてレイトショー,他全国順次公開!!
息つく暇もない矢継ぎ早のペースで娯楽映画の快作を連発する城定秀夫監督が、新作『タナトス』を完成させた。原作は、元WBA世界ミドル級王者である竹原慎二・原案、落合祐介・作画のコミック『タナトス~むしけらの拳~』。ボクシング経験者である徳山秀典を主演に迎えている。ボクシング映画ならではの面白みや苦労から、厳しい制作条件をものともしない臨機応変な映画作りに至るまで、城定監督にお話を伺った。(取材:鈴木 並木)
――いちばん苦労されたのはどのあたりでしたか。
城定 十分な時間がないところです(笑)。後楽園ホールのレンタル料が非常に高いので、十二分な時間は取れないと言われていました。最低2日は使えると思っていたので、いろいろ後楽園ホールで撮るつもりだったんですけど、最後の勝負だけになりました。ほかの試合も出来れば後楽園ホールで撮影したかったです。それで、ほかは「新宿FACE」っていう、おもにプロレスをやっている会場で撮りました。そこはロープも真っ黒なんで、カラーのガムテープを張って(笑)撮影を終えました。
――では後楽園ホールでの撮影は1日だけですか。
城定 はい。とにかく時間との戦いなので、直前でいろいろ段取りが狂って、準備が追いつかなかったことですね。あとはそんなに苦労はないですよ。演出面では、キャストの力を生かして、カット割りなんかもあんまり事前に決め込まないでやっていったので。1回やって、芝居見て、じゃあ撮りましょうか、みたいな。
――撮影に入る前の、ロケハンなどは余裕があったのでしょうか。
城定 余裕はありました。ただし震災が起きて、そこでばたばたっと段取りが狂っちゃって、貸してくれるはずのところが震災の影響で借りられなくなったりとか、後楽園ホールも「修繕が生じたから、本番直前まで入れない」と言われてロケハンが出来なかったり、そういうことはありましたね。
――ロードワークをする道の脇に出てくる、大きな風車が目を惹きます。
城定 あれは晴海のほうですね。本当は大きな海浜公園みたいなところを借りて、そこで全部できるくらいの予定だったんですけど、そこがやはり地震でダメになったので探して、直前に見つけました。
――この作品でも、監督のほかの作品でもそうですが、まっとうな人生観が感じられるというか、きちんと働くのをよしとするみたいなところがある気がします。たとえばこの映画だと、棚夫木がボクサーとして大成して母親に家を買いたいと言っていますね。
城定 あんまりテーマ的なひねりを求められない仕事を取り上げることが多いということでしょうか。今回に関して言えば、原作がもう、どストレートで、直球豪腕だったので、そのままで行きたいというか、恥ずかしがってひねったりしちゃダメだなと思いました。
――許されるものならひねってみたいですか。
城定 こういう企画を渡されたときは、そうは思わないです。ほんとに好きにやれ、って言われたときは、やってみたいことも多少はありますけど。娯楽映画を目指しているんで、基本的には。
――原作が全部で8巻ですが、この映画版は途中までなのでしょうか。
城定 いや、棚夫木とリクがこれから世界を目指そうというところで原作も終わっているので、最後までです。登場人物も原作ではもっと多いんですけど、おのおのが担う役割を一人に詰めこんだりといった作業をおこないました。最初に書いた脚本は長くなりすぎたので、そこを削って、いかに無駄なく話を進めるかという作業でした。
――今回もそうですが、脚本や編集もご自分で手がけられることが多いですね。
城定 ふだん、監督・脚本・編集ワンパックでギャラいくら、なんですよね。だから脚本をソトに頼むと、どんどんギャラが減って、自分の分がなくなっちゃうんで(笑)。そのクセでずっとやってきて、だから分担作業をいままであまりやったことがなくて。今後はそういうこともやっていかなくちゃいけないんですけど。編集は、これはプリントではないので、ふだんやっていることと変わらないです。
――こういった作品の場合、客層として、原作の読者とキャストのファンとが想定されると思いますが、どっちを目当てにしようというようなことは考えるものですか。
城定 そこはそんなに考えないんですよね。もう、どこに合わせるっていうのはきりがないんで。原作を読んで、ぼくならこういう風に見たい、というのに合わせるというか、いちばんは自分の物差しを信じます。次は、現実的に言うと、キャストのファンをがっかりさせないというところ。もちろん原作のファンが見て「全然違う」っていうことになると、それもマズいですし。 最終的には自分の感覚でやらないとだめなんですよ。なんとなく「これやるとひとが喜ぶだろう」みたいなところだけでやっていくと、しんどい部分もある。そうしなきゃいけない場合や、全然興味のないことをやらなきゃいけないときも、ときにはありますけど・・・興味の持てる部分をきちんと探し出していかないと、気の抜けた作品になっちゃうので。
――いちばんの見所はどこでしょうか。
城定 うーん……その質問一番苦手なんですよね(笑)僕としては、全部が見所と言いたいところですが……(と思案顔)
――ご自身で言いづらければ、こういうひとに見に来てほしい、ですとか。
城定 誰が見に来ても楽しめるようには作りました。もちろん、ボクシング分かんないからつまんないとかは、ないと思います。逆にこれを見てボクシングに興味を持つひとが出てくるといいなと思っています。原作本には、映画にない部分もいっぱいあるので、そちらも買っていただけるとうれしいです。ホントにいい漫画だと思いますよ。
宣伝・瀧 この作品は、孤独な少年が夢を見つけてその夢に向かってがんばる姿を描いているので……いま日本が落ち込んでますけど、見終わった後、元気が出てくる作品なので落ち込んだときに見てもらいたいです。城定 それいいですね。ぼくが言ったことにしていいですか(笑)。
――どうもありがとうございました。
( 取材:鈴木 並木)
出演:徳山秀典,佐藤祐基,平 愛梨
渋川清彦,古川雄大,大嶋宏成,大口兼悟,斉藤一平,白石朋也,秋本奈緒美,升毅,梅沢富美男
原作/竹原慎二・落合裕介「タナトス ~むしけらの拳~」(小学館ヤングサンデーコミックス刊)
監督・脚本・編集:城定 秀夫 協力:小学館 制作プロダクション:レオーネ 配給・宣伝:ユナイテッド エンタテインメント
製作:「タナトス」製作委員会(GPミュージアムソフト・ヒューマックスコミュニケーションズ・レオーネ・ユナイテッドエンタテインメント・ミュージックシネマズジャパン・NPO法人日本ベトナム交流センター・ラフター)
©2011 竹原慎二・落合裕介・小学館/「タナトス」製作委員会
2010年9月10日(土)より、
渋谷ユーロスペースにてレイトショー,他全国順次公開!!
- 監督:金田敬
- 出演:徳山秀典, 齋藤ヤスカ, 植野堀まこと, 河合龍之介
- 発売日:2010-10-22
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- 監督:石田秀範
- 出演:水嶋ヒロ, 佐藤祐基, 里中唯, 徳山秀典, 加藤和樹
- 発売日:2009-07-21
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主なキャスト / スタッフ
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