インタビュー
KOTOKO/塚本晋也

塚本晋也 (監督)

映画「KOTOKO」について

公式

2012年4月7日(土)よりロードショー!
テアトル新宿、シネ・リーブル梅田、名古屋シネマスコーレ、KBCシネマ1・2 他全国順次

塚本晋也監督が沖縄出身のアーティストCoccoを主演に据えて撮り上げた最新作『KOTOKO』。映画制作においてひとり何役もこなす才人として知られ、完璧に統制された映像美学を見せてきた塚本監督だが、今作ではCoccoと密接に協力し合って、彼女の精神、そして“母性”への敬愛を描いており、そのパーソナルな新境地が各国の映画祭でも絶賛を浴びている。Coccoの内面を探る深遠な旅のような脚本作りや、震災の影響を受けながらの撮影などについて語っていただいた。(取材:深谷直子

塚本晋也 1960年1月1日、東京都出身。14歳で初めて8ミリカメラを手にする。87年『電柱小僧の冒険』でPFFグランプリ受賞。89年『鉄男』で劇場映画デビューと同時に、ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞、客席を「TETSUO!!」コールの熱狂の渦に巻き込み衝撃の世界デビュー。ベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門審査員特別大賞受賞の『六月の蛇』、同映画祭メインコンペ部門で異例のSF映画の正式上映となった『鉄男 THE BULLET MAN』など、製作、監督、脚本、撮影、照明、美術、編集などすべてに関与して作り上げる創作スタイルで、国内、海外で数多くの賞を受賞。映画ファン、批評家のみならず、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ、アレハンドロ・ホドロフスキー、ギャスパー・ノエ、ジャン=ピエール・ジュネなど多くの映像作家をも虜にしている。特に『ブラック・スワン』のダーレン・アレノフスキーは塚本の息子を自称するほど。一方俳優としての評価も高く、自身の監督作の他、『殺し屋1』(監督:三池崇史)『とらばいゆ』(監督:大谷健太郎)などで02年毎日映画コンクール男優助演賞受賞している。テレビではNTV「きたな(い)ヒーロー」CX「演技者。」NHK「ゲゲゲの女房」「坂の上の雲」「カーネーション」などに出演。

塚本晋也監督1――『KOTOKO』は東京フィルメックスでいち早く拝見することができたのですが、非常に強烈な体験をさせていただきました。Coccoさんが主演する映画ということ自体が大きな驚きでしたが、塚本監督にとってCoccoさんの映画を撮ることは長年の願いだったとのことです。『ヴィタール』(04)にも楽曲の提供という形でCoccoさんが参加していましたが、Coccoさんへのアプローチは以前からされていたんですか?

塚本 ヴィタール』の前はしていないです。ただCoccoさんの歌はCoccoさんのデビュー当時から好きでした。僕の映画で言うと『BULLET BALLET/バレット・バレエ』(98)の頃だと思うんですが。その頃からCoccoさんの歌はかなり意識していました。

――Coccoさんは96年にインディーズからデビューし、メジャー・デビューが翌年の97年ですから確かにその頃ですが、そこで既に意識されていたんですね。

塚本 『バレット・バレエ』には少女が出てくるんですけど、ちょっとCoccoさんを意識したようなところがあります。で、『ヴィタール』のときには、Coccoさんを濃密にもっと意識した人物像を作り出しました。それと解剖とか都市、肉体といった自分のテーマを混ぜたような脚本を書いて、Coccoさんに見てもらおうと思いました。そのときはちょうどCoccoさんが活動を休憩していた時期だったんですが、人を介して脚本を渡していただいて、そしたらあるときCoccoさんが自宅でギターを弾いて歌った歌が送られてきたんです。それがCoccoさんとの関係の始まりですね。

――塚本監督は最近CoccoさんのUstream用オムニバス・ムービー『Inspired Movies』(11)に参加し、その作品をCoccoさんがとても気に入られて、今回の企画はCoccoさんの方から話を持ちかけたそうですね。

塚本 Inspired Movies』撮影時にも僕はCoccoさんと映画を作りたいということを言っていたのですが、Ustream公開された2010年11月に「今だったらやれるよ」っていう感じで話をいただきました。今年の3月がCoccoさんのデビュー15周年に当たり、そこから遡る1年は、15周年記念のビッグ・イベントがたくさん企画されていたんです。去年はツアーもあったんですけど、それに入る前の5月ぐらいまでなら使うことができると。

――急な企画だったようなのですが、塚本監督の世界観が出た、しっかりしたクオリティの作品に仕上がっていて、さすがだなと思いました。

塚本 そう言っていただけるとありがたいです。実際はCoccoさん、「時間があるよ」なんていう生易しい雰囲気ではなくて「あるぞっ!」っていうような感じだったんです(笑)。それでワラワラと、「これは大変だ!ビッグ・チャンスだ!」と思って取りかかりました。何を撮るかは決まっていなかったのでいろいろ考えました。自分の中で温めていたいくつかの撮りたい映画に出ていただくというアイディアもありましたが、せっかくのチャンスにそれはちょっと違うなと。Coccoさんに近付くイメージの映画にしたいと思い、Coccoさんへのインタビューを重ねていきました。あるとき、まだ塊にならないながらも胎動が始まっていると感じて、そこからは集中してがんばりました。

――昨年のベネチア国際映画祭出品のニュースがまったく思いがけないものだったので、いつの間にこんな作品を撮っていたんだろうとすごく思いましたけど、試行錯誤も含めて本当に集中して作ったんでしょうね。

kotoko1 kotoko2 kotoko3 kotoko4塚本 時間的にはすごい短かったんですけど、1日24時間っていう感じじゃなく、自分の体感速度としては1日68時間ぐらいの感じでした。また、それまで僕は自分の母親を介護していたので映画にかけられる時間というのは限られていたんですけど、母が亡くなった後だったのでその全部を投入して、本当に1日68時間ぐらいの濃密さで力を注ぎました。Coccoさんも同じだったと思います。

――Coccoさんは最初から最後まで出ずっぱりで、しかも演技が大変素晴らしいのでそこにも驚きましたが、演技力については大丈夫だという確信はあったんですか?

塚本 演技に対して疑問は感じなかったです。俳優としてもすごいんだろうと感じていました。『Inspired Movies』のときに、非常にシンプルな仕掛けを作って、それにどういうふうに返してくれるのかというのを見ていたんです。シンプルな3つぐらいの設定……、「最初は歌いながら森を歩いてください、次は音楽プレイヤーを手に取り、聴きながら歌ってください、最後は海岸を走って、そのあとアカペラで歌ってください」みたいなのを指示して。イヤフォンを拾い上げて聴き始めるときの行為というのは自然ではあるんだけど、ある意味で言えばひとつ演技なんですよね。Coccoさんは演技と思っていないかもしれないですが。自由だったと言ってくださっていますし。そういう表現の仕方をさりげなく観察するうちに相当な俳優さんだなというのが自ずと分かったので、演技面での心配はなかったです。 あとは今度の映画に関して言うと、脚本を書く過程でCoccoさんに見てもらい、違和感のあるところを言ってもらっているんです。「ここは私だったらこうしない、こうする」っていうことを全部取り入れさせてもらって書いているので、脚本ができたときにはCoccoさんの中では主人公の琴子と一体化していて、その意識の持ち方はものすごくハイレベルなものだった。表現するときはもう琴子になり切っていて、細かい演出は全然必要ないという感じでした。そして何よりも今回は、そもそもがCoccoさんとの話から始まっている物語なので、Coccoさんにとっては人から与えられてやる役というのではない、もっと主体的なものでしたから、普通と成り立ちが全然違うんです。

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KOTOKO  2011年|日本|カラー|DCP|FullHD|5.1ch|91分|PG12
監督:塚本晋也 脚本:塚本晋也 原案:Cocco 音楽:Cocco 出演:Cocco・塚本晋也 製作:海獣シアター 配給:マコトヤ  ©2011 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER 公式

2012年4月7日(土)よりロードショー!
テアトル新宿、シネ・リーブル梅田、名古屋シネマスコーレ、KBCシネマ1・2 他全国順次

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