人生のエンディングを、あなたはどう迎えたいですか？
カラフルな微笑みに包まれた、心に染み込む感動作

＜人生のエンディングをどう迎えるか？＞　誰もがいつか人生で向き合う最大で最後の選択。世界の主要国の平均年齢が上がり、圧倒的にシニア世代が占める現代。『みんなで一緒に暮らしたら』は、まさにそんな現代の悩めるテーマをユーモアたっぷりに温かく描いた感動作だ。人生の終わりをどう過ごすか考え始めた5人の男女が一緒に暮らし始めたら、という現実にも起こり得る端緒から始まる物語は、2011年第64回ロカルノ国際映画祭で披露されて観客から絶賛の拍手を浴びた。5年越しの企画を粘りに粘って製作を実現させたのは、フランス映画界期待の俊英監督、1970年生まれステファン・ロブラン。2度のアカデミー賞に輝く大女優ジェーン・フォンダを40年ぶりにフランス映画に出演させ、ジェラルディン・チャップリン、ダニエル・ブリュールら個性派名優たちを見事な企画と脚本で集結させた。笑いと涙を誘ってフランス、ドイツでは100万人を動員、世界各国でも話題となった今年一番のフランス映画がいよいよ日本公開。

平均年齢75歳、友人同士ではじめての共同生活
新しい扉を開く勇気があれば、自分らしい毎日はきっと楽しい

舞台はパリの郊外。昔から誕生日を一緒に祝ってきた5人の友人たち。アルベールとジャンヌ夫婦、ジャンとアニー夫婦。そして、一人暮らしのクロード。年を重ねて思い通りにいかないことや悩みが増えてきた今日この頃。病が進行していることを知ったジャンヌは、人生の最後をどう過ごすか考え始めていた。ある日、デート中に発作で倒れたクロードが、強制的に息子に老人ホームへ入れられるという事件が発生。クロードの窮地を救うため、独立心旺盛なジャンヌたちは共同生活をはじめるという斬新なアイデアを思いつく。さっそくお世話係の青年を雇い入れ、みんながアニーの一軒家に引っ越してくるが――。
ロブラン監督の実体験をベースに描かれた本作。賑やかな日常のエピソードの中に、細かな伏線をさりげなく忍ばせて、笑いと不安感でじわじわと物語に引き込む見事な脚本と演出。美しくも切ないラストは、あたたかな友情に優しく心包まれる。個性を尊重し合いながら支えあって生きることは、素晴らしい喜びを人生にもたらす。人生の最後に思い切って共同生活に踏み出すジャンヌたちの友情の物語は、悩みを抱える現代の私たちにとって、未来への幸せの道標だ。

ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリンら名優たちが集結
素晴らしい演技のアンサンブルが奏でる、希望に満ちた人生賛歌

夫を思いやる心優しいジャンヌを演じるのは大女優ジェーン・フォンダ。アカデミー賞7回のノミネート、2度の主演女優賞獲得の卓越した演技力、類まれなる美貌と才知は本作でも健在。本作は、ジェーン自身にとっても、死ぬまでにしたい事柄（「バケツ・リスト」）であった「もう1本、フランス映画に出演したい」という念願叶った記念すべき作品だ。可憐でしっかりもののアニー役には、天性のコメディエンヌ、ジェラルディン・チャップリン。子供のように悪巧みをする姿が微笑ましい男3人衆にはフランスの名優が好演。妻と犬を愛するアルベール役にピエール・リシャール、熱血な活動家ジャン役にギイ・ブドス、女好きの独身男クロード役のクロード・リッシュ。ドイツの実力派俳優ダニエル・ブリュール演じるディルクの、優しいお世話係り兼観察者の距離感も絶妙だ。ぴったりと息のあったリアルな演技で、笑いと涙を巻き起こし、彼らの実人生の喜びや悲しみを感じさせる。そして、このアンサンブルをより味わい深いものにする、フランスの名カメラマン、ドミニク・コランの優しく柔らかな映像と、ジャン＝フィリップ・ヴェルダンによる美しいメロディ。緑に囲まれた素敵な一軒家で、おいしい食事と賑やかな声に囲まれ、いつしか観客は彼らの共同生活の一員に。『みんなで一緒に暮らしたら』、きっとだれかと一緒に見たくなる、この秋一番の感動作だ。