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「性」と「生」を繊細かつ赤裸々に描き切った窪美澄の問題小説待望の映画化!

ふがいない僕は空を見た

http://www.fugainaiboku.com/

2012年11月17日(土)、テアトル新宿他全国ロードショー

INTRODUCTION

生きる。それだけのことが、
何故こんなに苦しくて愛おしいのだろう。

『ふがいない僕は空を見た』2011年本屋大賞2位、2010本の雑誌が選ぶベスト10の1位に選ばれ、第24回山本周五郎賞を受賞し話題をさらった窪美澄の小説、『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)。助産院を営む母子家庭で育った高校生・卓巳と、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・里美の物語を軸に、「性」と「生」を真正面から描いた短編連作が、ついに映画化された。

監督は、日本映画監督協会新人賞を受賞した08年の『百万円と苦虫女』や同年の『俺たちに明日はないッス』で青春時代の葛藤を鮮やかに描き、今、最も次回作が待たれている気鋭・タナダユキ。長編映画としては実に4年ぶりの新作である。
映画化の発端は、2011年の2月。原作を読んだ佐藤現プロデューサーが、男女の「性(セックス)」を赤裸々に描くだけでなく、そこからさらに踏み込んで、妊娠、出産など、女性作家ならではの視点から「生」という大きなテーマに堂々と向き合ったストーリーに感銘を受け、企画を立ち上げた。冷徹な現実を生々しく描きつつも、ほのかに希望を感じさせてくれる原作の読後感は、タナダ監督の映画に通じるものがあると思ったプロデューサーが打診したところ、タナダ監督もすでに原作を読んでおり、偶然にも映画化してみたいと思っていたという。刊行元である新潮社には約30件の映像化のオファーが殺到していたが、「タナダユキ監督が撮る」ということが決め手となり、製作が実現した。

元いじめられっ子で、姑から不妊治療や体外受精を強要されている主婦・里美。友達のつきあいで行ったイベントで“あんず”と名乗る里美と知り合い、アニメキャラクターのコスプレをして情事に耽るようになるが、その写真が何者かにばら撒かれてしまう高校生の卓巳。助産師として様々な形の命の誕生を見守っている卓巳の母。痴呆症の祖母と団地で暮らし、コンビニでバイトしながら極貧の生活に耐える卓巳の親友・福田。元予備校教師で福田に勉強を教える田岡……。現代社会に生きるそれぞれの登場人物が抱える思いと苦悩がリンクし合い、やがて一筋の光が見えるラストに収束していく群像劇を、タナダ監督は見事に作り上げた。

『ふがいない僕は空を見た』場面1脚本を手がけたのは、『俺たちに明日はないッス』でもタナダ監督とタッグを組んだ向井康介。1章ごとに語り手となる主人公が入れ替わる原作を、映画ならではの感動と生々しさの詰まった物語として再構築している。
ダブル主演を務めるのは、永山絢斗と田畑智子。『ハードロマンチッカー』や『ぱいかじ南海作戦』などで多彩な魅力を放つ永山と、『血と骨』『隠し剣 鬼の爪』などで確かな実力を見せる田畑は、複雑な思いを抱える難役に挑戦。赤裸々な性描写も必要な役柄だったが、卓巳の「葛藤」とあんずの「闇」、ふたりでセックスしているときの「喜びと切なさ」を魅力たっぷりに体現。裏に隠し持つ真の感情まで感じさせる多面的な表現には、胸を揺さぶられる。
他、助産師である卓巳の母・寿美子に、圧倒的な存在感で物語にリアリティを加えるベテラン原田美枝子。痴ほう症の祖母と団地に暮らす卓巳の親友・福田に、『十三人の刺客』の窪田正孝。“団地から脱するための武器”である勉強を福田に教える田岡に、『わが母の記』の三浦貴大……と、個性あふれる実力派もタナダ組の元に集結し、印象的な芝居で世界観を彩っている。

今作の登場人物たちは皆、やりきれない思いや行き場のない感情を抱いている。彼らは自身の苦悩や葛藤とどのように向き合い、乗り越え、どう新たな一歩を踏み出していくのか?弱くても必死にもがいて生きていく人々の姿を切なく描いた、静かな衝撃作が誕生した!

2012年11月17日(土)、テアトル新宿他全国ロードショー

インタビュー

タナダユキ監督インタビュー
「痛みを抱えたまま生きていくしかない普通の人たちの物語は、 今の自分だからこそ描けたと思います」

『ふがいない僕は空を見た』場面2タナダユキは、自分に正直な監督だ。デビュー作『モル』は初期衝動のエネルギーで突っ走った怪作であり、ドキュメンタリー『タカダワタル的』ではリアルタイム世代ではない若者の視線で高田渡というミュージシャンを切り取り、『赤い文化住宅の初子』や『百万円と苦虫女』といった青春映画を撮れば「明るくない苦み走った青春映画」になる。大胆だと言われることもある性描写のモチーフについても、「生きていく上で、避けられない事柄だから」だという。「自分が面白いと思うもの」「そのときの自分にしか撮れないもの」に常に向き合い続けているからこそ、どんなジャンルでも、どんな原作でも、タナダユキにしか撮れない映画になるわけだが、これまでのタナダ作品で一貫して描かれてきたのは「生きるということ」というシンプルなテーマだ。生きることの悲しさや可笑しさ、人とつながりたいというささやかな願いを描写しながらも、登場人物には安易に救いを差し伸べない。だからこそ、“決していいことばかりじゃないけど、生きていくことに意味はある”という人生の本質が浮き彫りになった映画になるのだ。

『ふがいない僕は空を見た』は、タナダユキ監督4年ぶりの長編映画である。前作『俺たちに明日はないッス』完成時には「10代の恥ずかしさを覚えているうちに撮りたかった」と語っていたが、今作も、まさに今のタナダユキにしか撮れない作品だったという。

「もう少し前にこの原作が発表されていて、もしも自分が映画を撮れるということになっていたとしても、できなかったかもしれません。もっと高校生たちをクローズアップした話になっていたかもしれませんね。自分は高校生を経験したことがありますし、あんずや母親の気持ちも想像ができる年齢になったので、こういう映画になったんだと思います。
原作を読んで、登場人物たちの生き辛さや生き難さを、自分の身近に感じることができたんです。物語の中で彼らが抱える問題が解決するわけではないけれど、それは私たちの実生活においても同じだと思うんですよね。“問題を抱えたまま、それでも生きていかなきゃいけない”というところが面白いなと思いました。
そして、それぞれの“登場人物”と“街”にも惹かれました。卓巳と福田を見ても、同じクラスにいるのに、片方はごく普通の家庭で、片方は経済的にとても苦しいという。地域に生きる人たちをちゃんと描きたかったので、卓巳とあんずのラブストーリーであると同時に、群像劇にしたいという意識が最初からありました。
登場人物たちは、みんな不幸になりたいと思っているわけではないし、自分たちなりの身の丈に合った幸せさえあればいいという、ごくごく普通の人たちだと思うんです。だけど、一度歯車がずれてしまうと、どんどん思いもよらない方向にいってしまう。さらに、それを投げ出す強さもない。流れに逆らう強さを持っている人ってすごく魅力的なんですが、ほとんどの人が、流れに逆らえないまま痛みを抱えて生きていくしかないと思うんです。そういう決して強くはない“特別ではない人たち”を描きたかったんです。

『ふがいない僕は空を見た』場面3そのためには、俳優さんたちの持っている力が必要でした。
永山絢斗さんは、実際には20代ですが、10代の子が抱えている弱さや繊細さを表現出来得るんじゃないかなと思いましたし、ご本人が持っている佇まいみたいなものが、私の想像する卓巳に共通するものがあるんじゃないかと。卓巳はものすごく熱い男の子ではないんですが、最後の最後で彼なりに感じるものがある。インする前にほんのちょっとだけやらせてもらったリハーサルを見て、彼なら大丈夫だと確信しました。田畑智子さんも素晴らしかったです。弱いけれど必死でもがいているあんずの人生そのものを背負ってくださったので、全部任せてしまって安心でした。
また、品性と色気はこちらの演出ではどうにもならないものだと常に思っているのですが、激しいベッドシーンが変な意味でいやらしくならなかったのは、お二人が持っている品性以外の何物でもないなと思います。原田美枝子さんは、私の大好きな増村保造監督や黒沢明監督ともお仕事されている方ですし、役に対する向き合い方が本当に丁寧で、とても勉強になりました。出産シーンをどう撮るかは手探りだったんですが、洋服の中に袋を入れて、そこに人形を入れて出したら赤ちゃんが出てくる感覚がわかるんじゃないかとか、人形を温めたほうがいいんじゃないかとか、他の女優さんがお芝居しやすい状況も考えてくださって。そういう意味でも原田さんに助けてもらった部分がたくさんありました。

様々な思いを抱えた人が登場する映画ですが、最終的には主人公の卓巳が何を感じるかが大事だと思いました。卓巳は物語の中で痛い目を見ますが、他の人が既に抱えている闇に比べると、人生の挫折みたいなものをたいして味わっているわけではないんです。だから、最後に卓巳が何を見て、何を感じるかということと、この作品の大きなテーマでもある“子供が生まれる”、“どんな思いを抱えても生きていく”というところに終着点が見出せれば、まとまりのある群像劇になるんじゃないか、と思っていました」

誰もが感じたことのある痛みを登場人物それぞれに託しながらも、最後に希望の余韻を残す今作。タナダ監督は「希望というよりも、『生きていかなきゃしょうがないじゃん』っていう感じなんですよね(笑)」と語るが、恋人、親子、夫婦、友達、嫁姑という関係性から立ち上がる感情を生々しく描くと同時に、すべての登場人物の信念を優しく肯定しているのは、タナダ監督が人間そのものに大きな愛情を持っているからではないだろうか。現代社会が抱える問題をさらりと背景にしながら、ベーシックな人間の感情が丁寧に描写されているため、何十年後かに観返しても色褪せない傑作と断言できるが、それは、才能に加えて相当な覚悟と気概がなければできなかったはずである。だからこそ、タナダユキという監督は信用できるのだ。

(取材・文:上田智子)

C R E D I T

出演:永山絢斗 田畑智子 窪田正孝 小篠恵奈 田中美晴 三浦貴大 銀粉蝶 /原田美枝子
監督:タナダユキ 原作:窪美澄 『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)  脚本:向井康介 音楽:かみむら周平
製作:福原英行/古玉國彦 エグゼクティブプロデューサー:加藤和夫 プロデューサー:佐藤現/木村俊樹
音楽プロデューサー:津島玄一 キャスティングディレクター:杉野剛 ラインプロデューサー:坂井正徳
撮影:大塚亮 美術:松塚隆史 録音:土屋和之 編集:宮島竜治 助監督:加藤文明 制作担当:鎌田賢一
製作:「ふがいない僕は空を見た」製作委員会  企画協力:新潮社  宣伝:スキップ  配給:東京テアトル
2012 年/142 分/日本/カラー/1:1. 8 5(アメリカン・ビスタ)/デジタル /R-18/ © 2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会
http://www.fugainaiboku.com/

2012年11月17日(土)、テアトル新宿他全国ロードショー

ふがいない僕は空を見た [単行本]
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俺たちに明日はないッス デラックス版 [DVD]
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  • 監督:タナダユキ
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2012/10/24/18:42 | トラックバック (0)
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