入江 甚儀 (俳優)
映画『流れ星が消えないうちに』について【2/4】
2015年11月21日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
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――現場としても、役者さんたちがそういうふうにいやすい雰囲気の現場だったのですか?
入江 そうですね。これは柴山(健次)監督がすごく思っていることだと思うんですけど、多分、役者の感情って全部画に映っちゃうと思うんですよ。例えば僕が、仮にですけど撮影する前に共演者とケンカして、そのあと仲のいいシーンを演じなくちゃいけないとなったとき、それがうまくいったとしても、仲よしの人と演じるのと、ケンカしてから演じるのとでは全然違うと思うんですよね。多分そういう見えないところから大事にしてくれる監督で、現場に入る前におっしゃっていたのが「優しい人だけ集めました」っていうことでした。スタッフさんもキャストも含めて。「優しい映画にしたいので、そこをまずいちばん大事にしました」っておっしゃっていて。だから現場の雰囲気もすごくよかったです。
――映画の世界観をそこまで大切にされていたんですね。では入江さんも人間性を知って選んでいただいたということで。
入江 プロフィールの写真の目を見て決めたって言われました。
――目だけで! 優しさがにじみ出ていたんですね(笑)。
入江 なんかそう言われました(照笑)。
――この作品はベストセラー小説の映画化ですよね。登場人物や作品の世界に思い入れを持っている原作ファンも多いと思うのですが、それがプレッシャーにはなりませんでしたか?
入江 僕も、言ったら原作のファンなので。読んだのは映画に出演することが決まってからですが、読み終わって僕もファンになっていました。だから役に対して失礼な気持ちで臨むつもりはなかったし、だからといって原作のファンの気持ちを意識しすぎて演じるのもよくないなと思ってもいましたし。この映画に携わっている人でこの原作を嫌いな人っていないはずだと思うんですよ。監督をはじめ、プロデューサーさんもスタッフさんも、原作が好きで、その気持ちでこの映画を撮ったと思うので、全然不安はありませんでした。自分たちそれぞれが自信を持って作った映画だと思っています。
――巧と奈緒子が付き合うようになった経緯は、映画の中では描かれていませんよね。入江さんはどう考えましたか?
入江 多分、加地が引きあわせたんだろうなと思いました。巧と奈緒子にとって共通していたのは「加地くん」という絶対的な存在への想いだったと思うんです。巧にとっては高校時代にすごい体験をさせたのが加地。高校時代の巧は何も考えないで生きている人間だったと思うんですけど、加地はそのころもう自分の将来のことを見つめていて、「今後どうしていけばいいんだろう?」と悩んでいるような大人の人間で、その人と出会って巧も感化されるんです。人生にターニング・ポイントって何回かあると思うんですけど、巧にとって初めてのターニング・ポイントになったのが加地との出会いだったと思います。奈緒子にとっても、もちろん恋人としても魅力があったし、人としても尊敬していたと思うし。そんなふうに二人にすごく影響を与えていた彼が突然いなくなってしまったから、想いを共有できる二人が漠然としたきっかけで付き合うようになったのではないかと思います。
――でも、二人には「加地くんを裏切っている」っていう気持ちもあるわけですよね。その葛藤が複雑だなと思いました。
入江 加地を裏切っているし、裏切られてもいるんですよね。奈緒子からしたら、加地は「自分探しがしたい」って海外に行ったのに、そこで別の女の子と一緒に死んだわけですから。多分、そういう形で突然いなくなってしまったからこそ加地くんへの想いは宙に浮いたままになり、漠然とそこまでの理由もなく、二人は付き合ったんだと思います。
――奈緒子が巧と一緒にいるときに、子供のころの加地くんを思い出して突然泣き出してしまうというシーンもありました。そういう複雑な女性の心理に寄り添う演技は難しくありませんでしたか?
入江 奈緒子の気持ちを理解することはできましたけど、ただ、巧としてもそれを全部分かっているとは言えないですよね。「恋人を喪ってしまった」ということは、やっぱり本人しか経験していない出来事なので。巧には奈緒子がどういう状況にいるかも分かるし、気持ちも分かってあげられるけど、何もできないもどかしさを感じるっていう気持ちで、この話の中の1から9ぐらいまではいるんじゃないかなと思います。そして最後のほうで「加地くんがいて俺たちなんだ」ということを受け入れられるようになってから、やっと巧も奈緒子も前に一歩踏み出せたんじゃないかと思います。この映画は「どうやって立ち直っていくか」という話だと思うんですよね。「やっぱり加地くんが忘れられない」、「やっぱり加地くんには勝てないんだ」って右往左往して。そういう映画だと思います。
出演:波瑠 入江甚儀 葉山奨之 黒島結菜 西原亜希 岸井ゆきの 八木将康 渡辺早織 古舘寛治 石田えり 小市慢太郎 原作:橋本紡『流れ星が消えないうちに』(新潮文庫刊) 監督・脚本:柴山健次
主題歌:塩ノ谷早耶香「流れ星」(キングレコード)
挿入歌:桐嶋ノドカ「柔らかな物体(piano ver.)」(A-Sketch)
配給:アークエンタテインメント 協力:武蔵野市 三鷹市 © 2015 映画「流れ星が消えないうちに」製作委員会
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