尾関 玄 (監督) 映画『ハルをさがして』について【6/6】
2016年8月6日(土)より、下北沢トリウッドにてロードショー
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内藤諭プロデューサー/尾関玄 監督――監督ご自身は今まで福島と接点はあったんですか?
尾関 震災前はなかったですけど、震災が起こって1年後ぐらいに、東北全県を回るドラマの仕事をやっていたんですよ。今よりは全然復興が進んでいない中で、東北の方とお話をして、「福島ナンバーの車は旅館に泊めてもらえない」という話を聞いたりして。その東北一周の仕事はもしかすると映画のきっかけになっているかもしれないです。まあそれだけが理由というのではなくて、いろんなことが重なり合って出来上がっていったと思うんですけど。
――そうですね。「中学生の映画を撮りたい」ということも結びついてこういう映画になったわけですが、子供たちが震災でどんな想いをしているのかという視点はすごく大事だなと思いました。福島に残るのか、避難するのか、という決断も子供たちにはできないことで、大人以上につらい想いをしている子供もいっぱいいるんだな、ということをあらためて考えました。いろんな立場の方に観てもらいたいですね。
尾関 そうですね。福島から避難している方にもぜひ観ていただきたいですね、どういう感想をお持ちになられるかは分からないんですけど。福島で上映するときもちょっと心配だったところはあるんですよ。ガスマスクだとか、ちょっと福島の方にはきついだろうな、というような台詞もありますから。でも何人かの方は「自分たちの映画だ」と思ってくださって応援してくださって。だから今度は福島から避難している方に観ていただいて、どんな感想を持たれるのか聞いてみたいですね。
――久しぶりに自主映画を撮られたわけですが、映画作りを通して思ったことはありますか?
尾関 映画を作ることによって、今まで出会うことのなかったような人に会えるのが面白かったですね。小野町やいわき市の人に会ってお話を聞いたりするのも映画を作らなかったらできないことだし、今は宣伝を自分たちでやっていますけど、そこでもまたいろんな方と直接お話をして。貴重な体験をしていますね。あと、作る時点で思っていたのは、自主映画というとどうしても作家性だとか、映画好きの人たちに届けるものというふうになりがちだけど、そういう極端な映画好きの人たちよりも、中学生だとか普段映画をあまり観ないような人たちにも楽しんでもらえる作品を目指していたので、福島の中学生に観てもらって「面白かった」って思ってもらえたのがやっぱりいちばんよかったですね。
――やっぱり手応えは大きかったのですね。いい映画を作ってくださって私からもありがとうございます。
内藤 小野町の中学校で上映会をしたときは、200人ぐらいの方が観てくれて感想文を書いてくれたんですよ。その中に「将来映画の仕事をしてみたい」っていう子がいて、それもすごく嬉しかったですね。
――すごいですね。「自分もこういう感動を与える仕事をしたい」と思ってくれたっていうことですよね。ぜひ映画を多くの人に観てもらって、今度はその感想を小野町の方たちに届けたいですね。では最後にこれから観る方たちへのメッセージをお願いします。
尾関 福島の原発事故という社会的なテーマが背景にはありますが、あくまでも中学生たちの青春映画として作りましたので、「福島」とか「原発」というと敷居が高く感じてしまう人にもぜひ観ていただきたいです。また、そういった問題に対していろいろな立場や考え方があると思うんですが、そういう考えというのは大人の考えだと思うんです。大人たちの考えの中で選択できない子供がいて、そのはざまで揺れたりもがいたり苦しんだりして、それでも前向きに生きている。そういう子供たちの青春映画なので、本当に多くのいろんな立場の方に観てもらいたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
( 2016年7月17日 下北沢で 取材:深谷直子 )
出演:小柴大河 佐藤菜月 小泉凱 橋本一輝 / 洞口依子 小沢仁志
脚本・監督:尾関玄
企画・製作・配給・宣伝:ISHIO プロデューサー:内藤諭 撮影:栗田東治郎
録音・整音:小牧将人 編集:石川真吾 音楽監督:遠藤浩二
主題歌「呼んでくれ」甲本ヒロト
©2015 ISHIO
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