ぼくらのレシピ図鑑シリーズ第3弾
『メンドウな人々』
初日舞台挨拶レポート
2023年9月8日(金)まで 新宿K’s cinema にて上映
大阪・名古屋・神戸は「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ特集上映」にて上映
10月7日(土)より大阪シアターセブン 10月21日(土)より名古屋シアターカフェ
11月17日(金)・18日(土) 神戸 シアター・エートー
9月2日、K's cinema にて、映画『メンドウな人々』が公開され、主演の片岡千之助さんと安田真奈監督の舞台挨拶が行われた。
本作は、映画24区が「地域・食・高校生」をキーワードに作る「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」の第3弾。
友達も少なく、学校生活もパッとせず、モヤッとした感じで日々を過ごす高1男子・遠山雄大(片岡千之助)は、ある日、洋食店の店主・桑原猛(的場浩司)と出会う。猛はちょっとダメなオジサンで、寂しい者同士の友情が育まれる。そこに、「うどん部」の熱血高校生たちがからんできて……。荘厳な富士山の麓で、メンドウだけど愛おしい人々が繰り広げる、後味ホッコリの青春映画だ。
主演の片岡千之助さんは、人間国宝の片岡仁左衛門さんを祖父にもつ歌舞伎俳優。4歳から舞台を踏み、「歌舞伎界のプリンス」とも呼ばれている、劇中とは真逆のスマートな青年だ。歌舞伎では愛らしい少女から凛々しい青年まで幅広く演じているが、今回は初の現代劇で、初の主演映画。オファーについて、「僕につとまるのか、と最初は不安でしたが、とても良い経験をさせていただきました。」と振り返った。少々緊張気味なのを察した安田監督が「緊張してる?」とつっこむと、「歌舞伎の舞台の十倍くらい緊張してます(笑)。芝居を観ていただいた後に、顔を出してご挨拶するのは恥ずかしくて怖いですね。」とはにかみ、観客の皆さんの頬も緩んだ。
ロケ地は、富士山の麓の街、山梨県富士吉田市。空気が澄んで富士山が綺麗に見える11月に撮影されている。のんびりした映像とは逆に、撮影日程はわずか8日間というタイトなスケジュール。撮影当時の想い出を問われた千之助さんは、「ほんとにタイトでしたね。想い出は、色々ありすぎて……。うどん部の子たちは、劇中では先輩ですが実際は5歳くらい年下なんです。カメラが回ってない時には『後輩を守ってあげなきゃ』という気持ちが芽生えました(笑)。的場さんには本当に助けていただきました。『千!』と呼ばれて、とても優しく接していただきましたね。」と語った。
安田監督も大きく頷き、「的場さんは、ちょっと強面だけど、誠実でとっても優しいんですよね。千之助さんに対しても、ほかのキャストやスタッフにも、明るく優しく声をかけられて。千之助さんも、若手を気にして、よく声をかけられてましたね。タイトルは『メンドウな人々』だけど、ロケ現場は『面倒見のいい人々』ばかりだったかと。」と笑った。ひとつ、とても印象的だった千之助さんの気配りエピソードがあるという。「兄役の鳴海翔哉さんとは、同い年なんですよね。撮影前に緊張していたら千之助さんに『緊張してる?いいシーンにしようね。』と優しく声をかけられた、と感激してましたよ。」と話すと、千之助さんは「言ってたんだ……(笑)」とすっかり忘れていた模様。「緊張はお互い様ですよね。自分も緊張してたけど、それを見せるとみんなも緊張するので、できる限り緊張を見せないようにしてました。気さくに声をかけよう、と思ってました。」と、当時の想いを述べた。安田監督は、「素晴らしいですね!初主演の重圧もある中で、周りへの目配りができてらっしゃる。4歳からの舞台経験が活きているんでしょうね。」と絶賛した。
劇中には、山梨県富士吉田市の郷土料理「吉田のうどん」が登場するが、撮影前日、スタッフ・キャストで河口湖町のうどん店「蔵ノ介」で「吉田のうどん」を食べたそうだ。千之助さんは「今まで食べてきたうどんと違って、『吉田のうどん』は、かなりコシがあって独特。だしもうどんも、美味しかった。」と振り返り、安田監督も「『すりだね』という薬味がまた美味しいんですよ。辛いので入れすぎに注意してくださいね。」と観客に勧めた。「うどん部」のモデルは、ひばりが丘高校うどん部。うどんを作るだけでなく、月に数回出店したり、地域のうどん店のガイドブックを発行したりするなど、高校の部活の域を超えた活動内容で、しばしばメディアにも取り上げられている。本作は雄大と猛のデコボコ友情コンビも見どころだが、うどん部のアツい活動や丁寧なうどん作りも見どころだ。前述のうどん店「蔵ノ介」と、ひばりが丘高校うどん部が作り方を指導し、リアリティのあるシーンとなっている。
完成した映画を見てどう感じたか、と聞かれた千之助さんは、「色んな人たちに助けられて、なんとか撮影を走り切りましたね……。とにかく可愛い作品だと思います。ほっこりしますし、また富士吉田に行きたいな、と思いました。」とコメント。そして今後について、「歌舞伎は自分の軸を作っている大切な仕事ですが、映像の仕事で学ばせていただけることも多かったです。歌舞伎を大切にしつつ、映像の仕事も取り組んでいけたらと思います。色んな経験を重ねて、いい役者になれるよう頑張ります。」と抱負を語った。
劇中では、モヤッとしたヤル気のない高1男子だが、スマートで華のある千之助さん。気さくでソフトな語り口も好印象で、ファン増加間違いなし、と思える気持ちの良い舞台挨拶だった。
『メンドウな人々』は、ケイズシネマで9月8日まで上映されるが、大阪・名古屋・神戸は「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ特集上映」として上映される。中でも、同じく安田真奈監督・脚本による第1弾『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』は、人気沸騰中の堀田真由の初主演映画で、配信もDVD化もされていないので、ファン必見のお宝作品だ。( 大阪・名古屋・神戸上映情報はこちら )
映画「ぼくらのレシピ図鑑シリーズ」公式サイト
■シリーズ第1弾『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』2018年 兵庫県加古川市ロケ 公式サイト
監督・脚本:安田真奈 出演:堀田真由,岸本華和,西野凪沙,平井亜門,安藤瑠一,渡辺真起子,寺脇康文 他
■シリーズ第2弾『夏、至るころ』2020年 福岡県田川市ロケ 公式サイト
監督:池田エライザ 脚本:下田悠子 出演:倉悠貴,リリー・フランキー,原日出子,高良健吾 他
2011年には仁左衛門と戦後初の祖父、孫での「連獅子」を実現。以後、数々の舞台を踏みながら歌舞伎役者としての主軸を大切にしつつ、様々なことにチャレンジし表現者として邁進中。
監督・脚本 安田真奈: 2006年、上野樹里×沢田研二の電器屋親子映画『幸福(しあわせ)のスイッチ』監督・脚本で劇場デビュー。同年末に出産後は脚本業中心となったが、2017年より監督業復帰。堀田真由主演『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』、小芝風花主演『TUNAガール』、片岡礼子主演の実験的短編映画『あした、授業参観いくから。』の監督・脚本をつとめた。 公式サイト
坂本ちえ,西山宏幸,内山由香莉,上村健也 / 筒井真理子,的場浩司
監督・脚本:安田真奈
撮影:武村敏弘(J.S.C) 照明:古川昌輝 録音:吉方淳二 美術:古谷美樹 装飾:石渡由美 衣裳:江頭三絵
ヘアメイク:上田深里,猪久保友紀 助監督:向田優 制作担当:ばんばん 編集:藤沢和貴 音楽:西山宏幸
プロデューサー:小林大悟,安井一貴,三谷一夫 企画:荻野弘樹 ,西村雄太
制作プロダクション・配給:映画24区 製作:山梨放送 映画24区