レビュー

アンチヴァイラル

( 2012 / カナダ・アメリカ / ブランドン・クローネンバーグ )

わたなべ りんたろう

『アンチヴァイラル』 『アンチヴァイラル』場面1デヴィッド・クローネンバーグの息子であるブランドン・クローネンバーグの監督デビュー作である。マイケル・マンの娘(アミ・カナーン・マン/「キリング・フィールズ 失踪地帯」、ピーター・ハイアムズの息子(ジョン・ハイアムズ/「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」、「ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録」など)、デヴィッド・リンチの娘(ジェニファー・リンチ/「ボクシング・ヘレナ」、「サベイランス」など)、と同じく、親の現場を経験してから短編を撮り長編監督デビューしている。

ブランドン・クローネンバーグで特徴的なのは父の初期作品の作風に近いことだ。人体を破壊したり歪曲したりするテーマ、低予算映画らしく簡素なセットや実景を生かした無機的な画面作りに共通点が感じられる。意欲作でとても興味深く観たが、難はストーリーテリングにあまり興味がない、もしくは習熟していないのかストーリーとメインキャラクターの行動が分かりにくいことだ。それは父のデヴィッド・クローネンバーグの初期作品の「シーバース」「ザ・ブルード/怒りのメタファー」「スキャナーズ」にもあったが、父の作品は力技とテーマへのシンプルなアプローチで魅せきっていた。

高評価の作品を複数撮っていることでジェイソン・ライトマンは父のアイヴァン・ライトマンの名前を引き合いに出さなくても評価されるようになっている。ブランドン・クローネンバーグも同じようになることを楽しみにしている。その萌芽がいくつも観てとれる作品なので観ておくべき作品だ。今年はニコラス・ジャレッキー(「キング・オブ・マンハッタン/危険な賭け」)、シーン・ダーキン(「マーサ、あるいはマーシー・メイ」)、クレイグ・ゾベル(「コンプライアンス 服従の心理」)と今後も活躍を期待できる新鋭の見応えのある作品(DVDスルーの可能性もある、これらの作品が小規模ながら公開されているのは嬉しい傾向)が続々日本公開されているが「アンチヴァイラル」もその1本である。

(2013.05.21)

アンチヴァイラル
監督・脚本:ブランドン・クローネンバーグ
製作:ニヴ・フィッチマン ライン・プロデューサー:アンドレア・ラッファゲッロ 撮影:カリム・ハッセン
プロダクション・デザイナー:アーヴィンダー・グレイウォル 編集:マシュー・ハンナム 音楽:E.C.ウッドリー
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ,サラ・ガドン,マルコム・マクダウェル,ニコラス・キャンベル,ダグラス・スミス,ウェンディ・クルーソン,シーラ・マッカーシー
2012年/カナダ・アメリカ/108分/カラー/アメリカンビスタ/ドルビー・デジタル/原題:Antiviral
配給:カルチュア・パブリッシャーズ,東京テアトル ©2012 Rhombus Media(Antiviral)Inc.
公式

2013年5月25日(土)より、シネマライズほか全国公開

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  • 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
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