中国映画の全貌2012
2012年10月6日(土)~11月16日(金)まで、新宿K’s cinemaにて開催
ロスト・イン・北京
私の少女時代
今年の“中国映画の全貌2012”は、日中国交正常化40周年にふさわしく革命直後の映画から現代の都市部の市民像を見事に切り取ったスパイスの効いた作品までそろいました。
日中国交回復後、日中友好協会に寄贈されたフィルムをデジタル化、上映を許可された5作品『農奴』『白毛女』『阿片戦争』『五人の娘』『ニエアル』を連続公開いたします。映像状態が悪く字幕も読みにくいのですが、純粋なプロパガンダ映画の傑作として一見の価値があります。
オープニングロードショーは、『私の少女時代』『ロスト・イン・北京』。
『私の少女時代』は、文革時代に下放された少女の実話からなる思い出話ですが、日本の疎開を描いたものでもそうですが、苛められた思い出などとかく暗い話が多い中、この物語は悲惨さは微塵もなく心地よく観ることができます。この監督の前作は、事故で両腕を失くした少女が努力してトップ・スイマーになるという実話の映画化で、心温まる映画作りを目指しています。
そして、『ロスト・イン・北京』。故今村昌平監督の言う“重喜劇”を継承したような、滑稽な庶民像を見せてくれます。中国公開時は、冒頭の中国ナンバーワン女優范冰冰(ファン・ビンビン)の体当たり濡れ場シーンがカットされて、しかも後に上映禁止になったといういわくつきの作品。ベルリン国際映画祭でも評判になり、李玉(リー・ユー)監督は一躍脚光を浴びることになり、一昨年『ブッダ・マウンテン』で東京国際映画祭芸術貢献賞、最優秀女優賞を受賞しています。
2012年10月6日(土)~11月16日(金)まで、新宿K’s cinemaにて開催
ロスト・イン・北京
監督・脚本:リー・ユー(李玉)
共同脚本:ワン・リー(王励)
出演:ピングォ:ファン・ビンビン(范冰冰) リン・トン:レオン・カーファイ(梁家輝) アン・クン:トン・ダーウェイ(佟大為) ワン・メイ:エレイン・チン(金燕玲) シャオ・メイ:ツアン・メイホイツ(曹美慧孜)
2007年/中国/ヴィスタ(1:1.85)/ドルビーSR/109分 原題:苹果/英題:Lost in Beijing 配給:オリオフィルムズ
物語 ピングォ(ファン・ビンビン)は村から北京に出稼ぎに来て、マッサージパーラーのマッサージ師として働いている。彼女にはビルの窓ふきをしている夫アン・クン(トン・ダーウェイ)がいるが、既婚者は雇わないパーラーなので夫のことは店には内緒にしている。貧しいが二人には楽しい都会生活だった。
ある日、解雇された友達シャオ・メイ(ツアン・メイホイツ)を慰めるため、ピングォは一緒にお酒を飲み、したたかに酔ってしまった。酔ったまま店に戻り社長室に入ったピングォは、店のオーナーリン・トン(レオン・カーファイ)を夫と間違えてしがみつく。途中で夫ではないことに気付き拒否するが、リン・トンは構わず行為を続けレイプした形になった。
偶然、そのビルの窓を拭いていたピングォの夫アン・クンがその現場を目撃する。怒ったアン・クンはそこへ乗り込む。その一件でピングォは結婚していることがバレて解雇されてしまう。
ところがしばらくしてピングォは妊娠したことを知る。夫の子かリン・トンの子か分からない。ピングォは中絶しようとするが、アン・クンはリン・トンの子に違いないとしてリン・トンから慰謝料を取ろうとする。リン・トンには長年連れ添った妻ワン・メイ(エレイン・チン)がいるが、二人の間には子供がなかった。リン・トンはアン・クンと契約を結ぶ。生まれた子の血液型で自分の子と判明したら、子供を引き取り二人には多額の報酬を払う約束をする。
長年の夢だった自身の子供を抱ける、リン・トンはだんだん自分の子供だと確信するようになり、ピングォに特別のはからいをする。一方、嫉妬もあり妻のワン・メイはアン・クンと関係を持つようになる。そして…。
解説 ベネチア国際映画祭CICAE賞受賞作『紅顔』に続く、監督・リー・ユー(李玉)と製作総指揮・ファン・リー(方励)コンビの問題作。この二人にファン・ビンビン(范冰冰)主演を加えたトリオの誕生作とも言える。このトリオは、引き続き2010年『ブッダ・マウンテン』(東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞、最優秀女優賞受賞)、2012年『DOUBLE XPOSURE』を製作している。『ロスト・イン・北京』は、『トゥヤーの結婚』が金熊賞(グランプリ)を受賞した、2007年ベルリン国際映画祭にコンペ部門に出品された。中国当局の指摘により激しいセックス描写等のカットを要請されたが、実際は編集が間に合わずそのまま上映した。いわく付きの出品となったが、ウーロン茶のコマーシャルで日本でもおなじみの中国ナンバーワン美人女優ファン・ビンビンの体当たり演技が評判になり、著しい経済成長の真只中の庶民を描いた女性監督リー・ユーは一躍注目された。中国国内では先の要請通りのカット版が公開されたが2008年上映禁止処分になっている。しかし、貧富の格差を社会問題として描くのではなく、この経済発展を富裕層は戸惑いながらも享受し、貧困層はチャンスがあれば物にしようという庶民の姿を鋭く切り取った、まさに問題作と言える。今回は完全版での上映。
私の少女時代
監督・脚本:リー・ユー(李玉)
監督:フェン・ゼンジ(馮振志) プロデューサー:チャオ・ホイリー(趙慧利) 原作・脚本:チャン・ハイディー(張海迪)
主演:ファン・タン:リー・イーシャオ(李依暁),リー・ジャン:ワン・イー(王毅)
2011年/中国/ヴィスタ(1:1.85)/102分 原題:我的少女時代 英題:My Girlhood 配給:オリオフィルムズ
物語 1960年代後半の文化大革命が始まった中国のある都市。5歳の時に得た病で下半身が麻痺して学校へ行くことができなかった少女ファン・タンは、いつも窓際のベッドで本を読み勉強していた。ある日、ファン・タンはアコーディオンを弾く青年リー・ジェンと出会い親しくなる。しかし、文化大革命のさ中、二人は別々の場所に下放されて引き離される。リー・ジェンは大好きな本も読めず鬱々とした日々を過ごすが、ファン・タンは鍼灸の本を読み独学で治療法を身に着ける。無医村の下放地で彼女は重宝されて治療を受ける人が列をなすようになる。土地の子供たちとも打ち解けた。その中の聾唖の子シャオジンライの父親が車椅子を作ってくれ、往診にも行けるようになる。ファン・タンの一番の願いはシャオジンライの病気を直し話せるように治療することだった。その思いを胸に、眠る時間も惜しみ病気になるほど勉強を続けた。鍼灸には聾唖を治す治療法もあり、シャオジンライに治療を施すがシャオジンライが言葉を発することはなかった。数年が過ぎ、文化大革命も終わりを告げ、ファン・タンの家族は元の家に戻れることになり、村の人々は彼女との別れを惜しみ子供たちも涙ながらに見送ってくれた。そこにシャオジンライの姿はなかったが…。
解説 中国のヘレン・ケラーと言われる、中国障害者連合会の女性会長チャン・ハイディーが自身の自伝的小説「車椅子の上の夢」を自ら脚色し、フェン・ゼンジが監督、チャオ・ホイリーが製作を担当した。フェン監督とプロデューサーのチャオは夫婦で、本作でクレジット上は分けているが製作も監督も共同で行っている。主演のリー・イーシャオはテレビドラマでは多くの主演作を持つ人気女優、CM出演等モデルとしても活躍している。本作ではこの役にはまった美少女役を軽快に演じて、彼女を見ているだけで癒される思いがする。舞台になった時代は文革の嵐が吹き荒れ下放が始まり中国が混乱していた時代。この時代は日本の第二次大戦時と同じように忘れることのないように繰り返し映画化される。主人公のファン・タンは下放先で医術を独学で身に着け無医村の医者として慕われる。『シュウシュウの季節』のように下放された地でつらい思いをする映画は多いが本作はその地その時を懐かしく振り返る。実話に基づいた物語であり、厳しい時代背景も描かれるのだがそれよりもその地の子供たちや地元の人々との交流を中心に温かく描かれ、心温まる作品に仕上がっている。そのせいか中国共産党結党90周年、辛亥革命100周年記念作品の一本に選ばれた。さらに2011年大学生映画祭で作品大賞を受賞。オープニングとラスト車を運転している現在のファン・タンはチャン・ハイディー自身が演じている。
- 10月6日(土)~12日(金)
10:40『私の少女時代』 13:20『ロスト・イン・北京』 16:00『私の少女時代』 18:40『ロスト・イン・北京』 - 10/13日(土) 10:40『さらば、わが愛/覇王別姫』 13:50『運命の子』 16:15『子供たちの王様』
18:40『花の生涯~梅蘭芳~』 - 10月14日(日)
10:40『紅いコーリャン』 13:20『1978年、冬。』 16:00『北京の自転車』 18:40『トゥヤーの結婚』 - 10月15(月)
10:40『宋家の三姉妹』 13:20『青い凧』 16:00『我らが愛にゆれる時』 18:40『スプリング・フィーバー』 - 10月16日(火)
10:40『五人の娘』 13:20『ソフィーの復讐』 16:00『初恋の想い出』 18:20『阿片戦争(1997年)』 - 10月17日(水) 10:40『白毛女』 13:20『變へんめん臉 この櫂に手をそえて』 16:00『孫文の義士団』 18:40『チベットの女 イシの生涯』
- 10月18日(木)
10:40『農奴』 13:20『狙った恋の落とし方。』 16:00『菊チュイトウ豆』 18:40『三国志英傑伝 関羽』 - 10月19日(金) 10:40『阿片戦争(1959年)』 13:20『鉄西区/第1部「工場」』 16:00『孔子の教え』
- 10月20日(土)
10:40『宋家の三姉妹』 13:20『サンザシの樹の下で』 16:00『ソフィーの復讐』 18:40『再会の食卓』 - 10月21日(日)
10:40『孔子の教え』 13:20『海洋天堂』 16:00『無言歌』 18:40『スプリング・フィーバー』 - 10月22日(月)
10:40『ニエアル』 13:20『我らが愛にゆれる時』 16:00『胡同の理髪師』 18:40『五人の娘』 - 10月23日(火) 10:40『再会の食卓』 13:20『古井戸』 16:00『 女工哀歌(エレジー)』 『白毛女』
- 10月24日(水)
10:40『ウォーロード/男たちの誓い』 13:20『子供たちの王様』 16:00『ジャライノール』 18:40『農奴』 - 10月25日(木) 10:40『鉄西区/第2部「街」』 13:50『紅いコーリャン』 16:00『阿片戦争(1959年)』
18:40『狙った恋の落とし方。』 - 10月26日(金)
10:40『鉄西区/第3部「鉄路」』 13:20『孫文の義士団』 16:00『 再生の朝に』 18:40『運命の子』 - 10月27日(土) 10:40『長江哀歌』 13:20『 一瞬の夢』 16:00『青の稲妻』 18:40『世界』
- 10月28日(日)
10:40『プラットホーム』 13:30『四川のうた』 16:00『三国志英傑伝 関羽』 18:40『ニエアル』 - 10月29日(月) 10:40『五人の娘』 13:20『白毛女』 16:00『農奴』 18:40『阿片戦争(1959年)』
- 10月30日(火) 10:40『青い凧』 13:20『青の稲妻』 16:00『古井戸』 18:40『サンザシの樹の下で』
- 10月31日(水) 10:40『花の生涯~梅蘭芳~』 13:20『ウォーロード/男たちの誓い』 16:00『再会の食卓』 18:40『ジャライノール』
- 11月1日(木) 10:40『我らが愛にゆれる時』 13:20『チベットの女 イシの生涯』 16:00『宋家の三姉妹』 18:40『四川のうた』
- 11月2日(金) 10:40『鉄西区/第1部「工場」』 13:20『 一瞬の夢』 18:20『さらば、わが愛/覇王別姫』
- 11月3日(土) 10:40『鉄西区/第2部「街」』 13:50『五人の娘』
- 11月4日(日) 10:40『鉄西区/第3部「鉄路」』 13:20『白毛女』
- 11月5日(月) 10:40『再生の朝に』 13:20『ニエアル』
- 11月6日(火) 10:40『紅いコーリャン』 12:40『さらば、わが愛/覇王別姫』
- 11月7日(水) 10:40『世界』 13:20『孔子の教え』
- 11月8日(木) 10:40『無言歌』 13:20『胡同の理髪師』
- 11月9日(金) 10:40『初恋の想い出』 13:00『阿片戦争(1997年)』
- 11月10日(土) 10:40『 女工哀歌(エレジー)』 13:00『農奴』
- 11月11日(日) 10:40『運命の子』 13:00『變へんめん臉 この櫂に手をそえて』
- 11月12日(月) 10:40『北京の自転車』 13:00『菊チュイトウ豆』
- 11月13日(火) 10:40『サンザシの樹の下で』 13:00『トゥヤーの結婚』
- 11月14日(水) 10:40『長江哀歌』 13:00『1978年、冬。』
- 11月15日(木) 10:40『プラットホーム』 13:20『阿片戦争(1959年)』
- 11月16日(金) 10:40『ロスト・イン・北京』 13:00『私の少女時代』
2012年10月6日(土)~11月16日(金)まで、新宿K’s cinemaにて開催
主なキャスト / スタッフ
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