『桃まつりpresents なみだ』開催
2013年5月11日(土)~5月24日(金)、
渋谷ユーロスペースにてレイトショー
全8作品を3プログラムに分けて上映
桃まつりとは
「若手女性監督たちにもっと上映の場を!」と立ち上がった女性監督による製作・上映集団“桃まつり”。毎年3月にユーロスペースで上映し、2週間で1,300人以上の動員を記録。商業映画やスカラシップ作品など、次回作へ繋がる新たな才能のプラットホームとして、国内外から多くの注目を集めている。
桃まつりをはじめて……/竹本 直美
桃まつりが始まって、早6年の月日が流れました。元々は、映画を志す仲間たちと始めた小さな小さな映画上映会。初めて自分たちで企画から、宣伝、上映までの全てを手がけ、何もかもが手探りで、とても大変でした。しかしそれは、楽しいことも、新しい発見もある、得難い体験だったのです。企画制作段階から沢山の方々に支えられ映画は作られ、また上映までの過程でも、それまで知り得なかった沢山の作業を経験しました。これらの過程を通じて、映画とは、なんて多くの人々の支えや、熱い思いがあって存在できているのだろう……としみじみ感じました。そして、上映の後は、自分たちの作品を面白かった、つまらない……などと言い合う。観に来て下さった方々からは熱い意見をたくさん聞くことができ、ああ、映画とは観てもらって、何かを感じてもらって完成なのだな…と、私はその時、当り前のことに感動したのです。その時の思いが、私が、今も桃まつりを続けている理由のひとつです。
私は、これまで毎年監督として参加しておりましたが、今年は、運営で参加しております。私が応援する側に回った理由、それは、今度はひとつでも多くの作品を一人でも多くの人に観てもらいたい、今回参加してくれた監督たちに、このような経験を通じて、より映画そのものの魔力を感じて欲しいという思いがあったからです。
繰り返しになりますが、桃まつりとは参加監督が企画、製作から宣伝、上映まですべてを受け持つ企画です。
そして出会い場でもあります!それは、製作段階から劇場でお客様に出会うまで、そして、東京だけにとどまらず、大阪、名古屋、他……。普段ではあり得ないほどの出会いがあります。その中で、何か新しいセカンドステージが監督たち、そして出会った皆様にも訪れる事を祈りつつ、御挨拶とさせて頂きます。何卒、8人8色のなみだをお楽しみください。
今年のテーマは「なみだ」
2013年春に開催される今回のテーマは“なみだ”。 私達はラブコメからホラーまで多様なジャンルの映画に欠かせない表現に挑戦します。各監督の中にある、笑い、哀しみ、喜びなどを“透明な魔法”によって描いた新作短編8本を上映。綺麗なだけでは納まりそうにない!?“なみだ”のまつりがいよいよ開催です!
《壱のなみだ》上映期間:2013/5/11~5/15
愛のイバラ ( 24分/4:3/stereo/8mm→HD ) 監督・脚本:小口容子
<あらすじ>
不思議ちゃん好き男子・山田はある日、道端に座っていたマキに、電撃一目惚れする。マキは電波の指令を受けて無茶な行動をする、電波系不思議ちゃんであった。山田は、マキの友人に超高飛車に危険信号を送られるが、山田自身も天然のためそれに全く気付かず、マキへの想いを募らせる。そして、遂にマキの妄想はタクシーで疾走する!!
<制作意図>
“8ミリフィルム×自家現像×ゲリラ撮影”による、「実験劇映画」!先日、コダック社までも製造をとりやめる、と発表した8ミリフィルムを素材とし、フィルムの物質としての質感を出すため・予定調和でない手動ライブ感を出すために自家現像をし、その結果として現れたフィルムの傷・汚れ・光のムラによるきらめき、を物語の疾走感に合わせて最大限に表現した。「フィルムの実験映画」としてのドラマ、を撮ったものである。
雨の日はしおりちゃん家 ( 25分/16:9/stereo/HD ) 監督:森田亜紀
<あらすじ>
舞台演出家の瑠川由季子は、公園で偶然、幼馴染の鈴木しおりと再会する。以前のような繋がりを持とうとする二人だったが、お互いの人生の違い、二人の間に出来たどうしようもない溝が明らかになっていき……。
<制作意図>
実体験をベースに、いつのまにか会わなくなってしまった友人の事、友人関係の変化を描きたいと思いました。人生の中の小さな出来事の積み重ねが、自分をつくっているのだと気付かされ、それをささやかに、少しドラマチックに描けたらと思いました。
MAGMA ( 31分/16:9/stereo/HD ) 監督・編集:渡辺あい
<あらすじ>
マラソンランナーのリサは、富士山麓でコーチの澤田とトレーニング合宿をしている。
ある時山道を走っていると、謎の女に追い抜かれる。リサは必死に追いかけるが、見失ってしまう。女の影に囚われ、リサの心は乱れ始める。
そんな中、澤田の元教え子で栄養士の瑶子が合宿にやってくる。彼女と澤田とのただならぬ関係に、リサの心は更に掻き乱されていく。
<制作意図>
一番を目指すリサ。リサを一番にしたい澤田。一番になれなかった瑤子。そして10年前、一番を目前にして死んだ女、翔子。彼らの中で沸々とたぎる、マグマのような想い。それらがぶつかり合って生じるドラマである。
《弐のなみだ》上映期間:2013/5/16~5/19
いたいのいたいのとんでいけ ( 30分/16:9/stereo/HD ) 監督:朴美和
<あらすじ>
まだ補助輪つきの自転車に乗っている小学校1年生の加奈が、両親の不仲を元どおりにしようと、ある行動に出るが…。
<制作意図>
この映画にはいろいろな傷が登場します。目に見える傷と見えない傷、治る傷と治らない傷。主人公の加奈は家の傷が治ったら、昔の仲が良かった頃の家族に戻れるのではないかと思ったのです。そして心身ともに傷つきながらも、痛みを感じているのは自分だけではないことを知ります。
サヨナラ人魚 ( 48分/16:9/ステレオ/HDV ) 脚本・監督:加藤綾佳
<あらすじ>
予備校に通うサミーは、ある秘密があった。ひとつは、予備校の講師、佐々木さんと密かにつきあっているということ。そして、その佐々木さんにすら内緒の、もうひとつの秘密……。他人と関わるのは面倒だけど、大切なひととは繋がっていたい。そんな思いを抱えながら過ごす、彼女の日常。けれど、せつなくも愛しい日々は、彼女の気付かないところで確実に軋んでいて。
<制作意図>
小さなころ、童話の絵本を買ってもらうのが好きでした。たくさんあった絵本の中で、『人魚姫』は繰り返し読んでいたのを特に覚えています。わたしが物語に対して、残酷で毒々しくて、それでも美しいお話があるのだ、と思った人生で最初の記憶です。そんな人魚姫をモチーフに、現代の女の子を主人公にお話をつくってみました。
《参のなみだ》上映期間:2013/5/20~5/24
貧血 ( 21分/16:9/stereo/HD ) 監督・脚本・編集・録音・特殊効果:加藤麻矢
<あらすじ>
都会の夜をさまよう若き女吸血鬼アベコ。成人童貞の生き血に飢え渇いて衰弱していく。アベコを車椅子に乗せ獲物を狙う、いづみ。疲労倦怠渦巻く彼女達に出くわした一組のカップルが、惨事に巻き込まれる。
<制作意図>
以前、貧血を起こしてヘモグロビンを渇望した時、これはもしや吸血鬼の心境なのでは……と連想したことが、続編を撮る動機になりました。また、昔の吸血鬼映画を観ている最中眠気に襲われることが多々あって、このダウナー感こそ吸血鬼作品の醍醐味……なのかもしれないという見解の下、制作しました。吸血鬼にとって処女はマストアイテムですが、女吸血鬼が主役のため、悩んだ末に童貞の登場となりました。
葬式の朝 ( 30分/16:9/stereo/AVCHD ) 監督・脚本:糠塚まりや
<あらすじ>
祖父が亡くなり、初美は実家へ戻ってくる。お腹が空いている初美だが、全ての食べ物をことごとく従妹の未来に奪われ、何も口にすることができない。何も食べられなかったまま、初美は夜中に祖父の線香を替えに棺の元へ向かう。祖父の死の実感がなかった初美は、祖父の棺のふたに手を伸ばす。
<制作意図>
中3の時に、おばあちゃんが亡くなり、大3の時に、おじいちゃんが亡くなった。中学のときは訳も分からず涙が出たのに、大学の時は少しも泣かなかったし、そのことに後ろめたさも覚えなかった。時間が経つにつれて、私の心には余計なものがくっついて、大切なことを感じられなくなっているのかもしれない。でも、お腹が空くってことは、生きている限り感じられる。それは、すごいことではないだろうか。
東京ハロウィンナイト ( 25分/16:9/Stereo/HD ) 監督:岡田まり
<あらすじ> ハロウィンのある日、田んぼにはいつものようにカカシの女の子が立っている。意地悪なカラスに突かれながら、カカシは東京での楽しいハロウィンパーティーに胸を踊らせる。それを可哀想に思った太陽が、月にお願いしハロウィンの一夜だけ人間にしてくれる。街はモンスターに扮した人間で溢れている。そんな中、お見合いパーティーに紛れ込んだカカシは、本物のゾンビに恋をする。人間でいられる時間も後少しとなったカカシとゾンビの恋の行方は…
<制作意図>
去年のハロウィンに、六本木では街にゾンビが溢れかえっていました。東京タワーを背景にした狂乱のハロウィンナイト。皆、思い思いのモンスターに仮装し、その非日常的光景に胸が沸き踊りました。そんなワクワクする空気を閉じ込めておきたくて、ゾンビの恋物語を思いつきました。脚本を書いて撮影するまで約一ヶ月の鮮度の良さでした。ゾンビと言えば脳みそ、脳みそが欲しいのはカカシ。孤独なふたりが出会って恋が始まる。