フッテージ
今作「フッテージ」(原題:Sinister)を観ようと思ったきっかけは海外の雑誌で話題になっていたこともあるが、友人でもあるダンカン(・ジョーンズ)が見ることをツイートしていたのもあった。ダンカンは忙しいので観る映画も割と選んでいるので「なぜ今作を?」と強く興味を持った。
実際に見て納得した。とても練られた上質のホラーだったのだ。監督・脚本はスコット・デリクソン。「エミリー・ローズ」(05)で注目されて「地球が静止する日」(08)のリメイクを撮った男だ。デリクソンにとっては「地球が静止する日」から4年を経ての新作である。デリクソンは短編「Love in the Ruins」(95)を経て「ヘルレイザー/ゲイト・オブ・インフェルノ」(00)の監督・脚本で出てきて(同年に「ルール2」の脚本も)ヴェンダースの「ランド・オブ・プレンティ」(04)の原案も書いた才人だ。基本、脚本家なので話の構築は抜群だ。「地球が静止する日」も傑作をリメイクするので分が悪かったが決して酷い出来ではなく健闘していた。ただ、さすがに次は撮りづらかったのか、「パラノーマル・アクティビティ」「インシディアス」のプロデューサーのプロデューサーのジェイソン・ブラムと組んで低予算のホラーのオリジナルで勝負してきた。
次にヒット作を出さないと家族離散の危機のノンフィクション作家が家族に内緒で実際に陰惨な事件が起きた家に引っ越してきて屋根裏部屋で見つけた8mmフィルムから自身が呪いに巻き込まれていく。冒頭の家族の集団首吊りの8mm映像が不気味に効いていて何が起こるか観客に期待させる。陰惨な事件を知り尽くしたはずのノンフィクション作家が思わぬうちに深みにはまっていくのも上手い。デリクソンの心意気は作品に反映されていて一軒家の中でほぼ展開されるのに(予算を抑えるため)不気味さを増しながら、伏線が生かされた恐怖が素晴らしい。「ホラーには出ない」と公言していた主演のイーサン・ホークが脚本を読んで出ることを決めたのも納得だ。
ここまで構築されているとうるさがたのホラーファンは好まない人もいるかもしれないが、ここまでやりきれば「さすが!」の一言でデリクソンは監督予定が次々発表されていて「When Gravity Fails」 「Goliath」 「Two Eyes Staring」「Beware the Night」とある。「Beware the Night」はエリック・バナ主演の狼男ものでプロデューサーがジェリー・ブラッカイマー、「When Gravity Fails」はサイバーパンクの名作、 「Two Eyes Staring」はシャーリーズ・セロン主演予定と興味深いプロジェクトばかりだ。脚本家としても「ポルターガイスト」のリメイクや既に完成済みの(アトム・)エゴヤンの「Devil's Knot」も書いている。良質な脚本が書けるとプロデューサーから仕事が次々と来るという良い例だ。 日本で言えば、古沢良太さんのようなものだろう。デリクソンは基本的にホラーの人だが。とにかくスクリーンでじっくり観てほしい作品だ。Jホラーや「シャイニング」の影響や取り入れ方も含めて映画好きに加えて映画を作る側ならより多くの発見がある作品でもある。
(2013.05.10)
監督・脚本:スコット・デリクソン
制作:ジェイソン・ブラム 音楽:クリストファー・ヤング 脚本:C・ロバート・カーギル
撮影監督:クリストファー・ノア 美術デザイン:デイヴィッド・ブリスビン
衣装デザイン:アビー・オサリヴァン 編集:フレデリック・トラヴァル
出演:イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ(特別出演)
配給:ハピネット 配給協力:ユナイテッド・シネマ ©2012 ALLIANCE FILMS (UK) LIMITED
2013年5月11日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、
ユナイテッド・シネマほか全国順次ロードショー!
- 監督:スコット・デリクソン
- 出演:クレイグ・シェイファー, ニコラス・タートゥーロ
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- 監督:ピーター・スピエリッグ, マイケル・スピエリッグ
- 出演:イーサン・ホーク, ウィレム・デフォー, クローディア・カーヴァン, マイケル・ドーマン
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