MUD-マッド-
「テイク・シェルター」(11)で注目を集めたジェフ・ニコルズによるドラマ。今作を見るきっかけは好きな俳優のマイケル・シャノンが「Shotgun Stories」(2007・未)、 「テイク・シェルター」に続いてニコルズ監督と組んだこと及び海外の絶賛評だった。「新たなアメリカ映画の名作誕生」(ウォール・ストリート・ジャーナル)、「今年最もクリエィティブかつ感情的に素晴らしい作品の1つ」(ロスアンジェルス・タイムス)やこちらが信用しているイギリスの映画雑誌「EMPIRE」でも「大胆で知的な21世紀のマーク・トウェインのようなストーリー」とまで書かれていてとても興味を持っていた。
地味な題材ゆえ公開されるか?と思っていたが1月公開が決まり11月から試写も回り始めたので観た。期待は裏切られることがなかった。まごうことなき傑作。最近の映画では珍しいぐらい豊かなストーリーテリングとキャラクターをじっくり見つめて、ゆっくりとしたペースに見えながら画面の表面下で展開している感情の流れが幾層にも交錯し決して飽きさせない。感情を噴出させるクライマックスに幕切れ。見事だ。
「リンカーン弁護士」「マジック・マイク」「キラー・ジョー」「ダラス・バイヤーズ・クラブ」など、ここ最近絶好調のマコノヒーが不器用に愛のために一途に生きる謎の男を好演。ストーリーの視点となる2人の少年も素晴らしく陰影に富んだ演技をみせる。物語を進めていくファム・ファタールをリース・ウィザスプーンが本来の実力で演じ切っている。マイケル・シャノンは普通の青年を演じて、依頼されることの多いサイコパス演技でなくても十分いけることを証明。そしてサム・シェパード!久しぶりに漢気溢れるサム・シェパードをスクリーンで観て大満足させてくれる。
今作を監督したジェフ・ニコルズは78年生まれの若き鬼才で、ここまでの三部作で南部を舞台に描いてきたが次作「Midnight Special」(2014)は初のSFで、キルティン・ダンスト、ジョエル・エガートン、盟友マイケル・シャノンのキャストでこれまた楽しみだ。「MUD-マッド-」では少年役2人にマーク・トウェインを参考に読ませたというが、そういうジュブナイルの側面も持つ多面的な作品を撮りきったことで実力をより蓄えたことも分かる。
「MUD-マッド-」は上質な小説を読んだ気分、いや上質な映画でしか味わえない映画ならではの情感を堪能させてくれるスクリーンで観るべき必見作だ。小規模公開だが是非、映画館のスクリーンで観てほしい。
(2014.01.19)
【STORY】 舞台はアメリカ南部、ミシシッピ川中州にある小さな島。14歳の少年エリスとネックボーンは、そ の島に潜伏する奇妙な男マッド出会う。 マッドは2人に嘘か本当か、テキサスで殺人を犯し賞金稼ぎに追われているが、町で自分を待つ恋人ジェニパーに会うため助けを借りたいと話す。興味をもった少年たちは、マッドに協力することを決めるが……。
監督・脚本:ジェフ・ニコルズ『テイク・シェルター』
出演:マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、タイ・シェリダン、サム・シェパード、マイケル・シャノン 他
配給:東京テアトル、アース・スター エンターテイメント ©2012 , Neckbone Productions, LLC.
2014年1月18日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷他公開
- 監督:ジェフ・ニコルズ
- 出演:マイケル・シャノン, ジェシカ・チャステイン
- 発売日:2013/07/26
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- 監督:アンディ・テナント
- 出演:リース・ウィザースプーン, ジョシュ・ルーカス, パトリック・デンプシー, キャンディス・バーゲン, メアリー・ケイ・プレイス
- 発売日:2012/07/04
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