インタビュー
11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち/井浦新

井浦 新 (俳優・クリエイター)

映画「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」について【1/4】

公式

2012年6月2日(土)より全国ロードショー

先日閉幕となったカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映され、話題を呼んだ若松孝二監督の新作『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』がいよいよ日本でも公開を迎える。晩年の三島由紀夫と、彼と行動を共にした「楯の会」の若者たちを、若松監督は連合赤軍の青年たちに寄り添ったように肉薄して映し、命懸けで変革を呼びかける男の姿は国境を越えて「美しい」と称賛された。新鮮な解釈での三島由紀夫を演じた井浦新さんに、カンヌ行きを控えお忙しい中、お話を伺う機会を得た。若松監督の熱い思いを受けての特別な演技体験や、監督の演出術について、そして筆者が前作『海燕ホテル・ブルー』公開時に若松組の「同志」とも言える大西信満さんを取材させていただいていたため、大西さんとのエピソードなども含めた魅力溢れる若松組の様子も語ってくださった。(取材:深谷直子

井浦 新 (いうら・あらた) 1974年東京生まれ。俳優・クリエイター。「ELNEST CREATIVE ACTIVITY」のディレクターを務める。98年に是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』に初主演。最近の出演作品に『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08年)や『空気人形』(09年)などがある。現在、放送中のNHK大河ドラマ『平清盛』(崇徳天皇役)に出演中。公開待機作に『かぞくのくに』(8月4日よりテアトル新宿ほか)、『莫逆家族 バクギャクファミーリア』、『千年の愉楽』などがある。旧芸名はARATA。

井浦新1
舞のシーンで使用した扇を構えて
――『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』は、若松孝二監督が『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)で描いたのと同じ60年代・70年代の対となるような出来事を描きたいと撮った作品とのことですね。新さんは、元々60年代・70年代のカルチャーに興味を持っていて、『連合赤軍』に手を挙げたのが若松組への参加の始まりだそうですが。

井浦 そうですね、元々60年代・70年代にものすごく興味を持っていて、そこを最前線で体現している若松監督にも興味がありました。その若松監督が連合赤軍の映画を撮るということに僕はすごく意味を感じたんです。若松監督じゃなければ描けないだろう、連合赤軍は、と。実際そうでしたし。なので若松プロに電話して、「役者をやってはいるんですけど、役者じゃなくてスタッフでも、どんな形でもいいので勉強させてもらえませんか?」と言ったのが最初ですね。

――スタッフでもいいからというのは相当な熱意だったんだなあと思います。足立正生監督の『幽閉者(テロリスト)』(06)に出演したことが若松監督と出会うきっかけとなったとのことですね。

井浦 そうです。それも60年代・70年代への興味の中で、元々映画人であり活動家でもある足立正生さんが日本に戻ってきて映画を撮るというのでぜひ参加したいと思って。言ってみれば若松監督の盟友であり、若松監督と『赤軍-PFLP 世界戦争宣言』(71)を撮ってそのまま身をゲリラ活動に委ねた、革命というものを最前線で体現した方が久々にメガホンを取るという、そんな現場は絶対に体験しないといけないと思わされ、『幽閉者』に参加させていただいたんです。そこに若松監督も役者として出ていて、その現場で「今度若松監督が連合赤軍を撮るんだぞ」という話を聞いてからいても立ってもいられなくなり若松プロに電話したのです。

――この時代に対して、本当に深い思い入れを持っていたんですね。活動に興味があったんですか?

井浦 いや、活動に興味があるというより人に興味がありました。僕は基本ノンポリで、ポリシーがないことをポリシーとしていたいなって思っているんです(笑)。歴史がすごく好きなんですよ。60年代・70年代というのは自分がとても好きな歴史の一部で。明治・大正・昭和を近代史だとして30年代・40年代・50年代それぞれにも興味があって、でもその中でも60年代・70年代はすごい熱量を持った時代であり、いちばん今自分が生きている時代に近い歴史だったりもするので。断片的にいろんな時代を自分のセンスで掘り下げていっているんです。

――時代としての熱量の高さに惹かれると。

井浦 そうですね、興味深い。出来事にしてもカルチャーにしても。歴史が好きというのは、きっとないものねだりなんですよね。現代にない熱量や興味深いことが歴史にはたくさんあって、そこから今自分は何を学んで、今、何ができるのか?という自分への問いかけと言うか、プレッシャーをかけることであって。歴史をそういうふうに捉えている中で、60年代・70年代は自分の一つのテーマでもあったりするんです。

『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』1――若松監督も歴史の中で埋もれてしまって現代に受け継がれていない、革命を起こそうとした人たちの思いを残すために『連合赤軍』や『三島』を撮ろうとしたとのことですね。

井浦 ええ、でも「革命」という言葉を監督の口から聞いたことはあまりないんですよ。その代わり、それを違う表現で言っているのは「現代の若者たちはもっと自由であればいいのに」ということです。「ただでさえ自由がなくなっているこのシステムの中で、自由がないことに対してなぜ怒らないのか、もっと怒れ」と。その「怒り」というものが監督の作品作りのすべてのモチベーションになっているし、「怒り」をポジティヴなものに変換させて行動する動機になぜ今の若者はしないのかとよく言っています。三島由紀夫さんが「楯の会」という軍隊を作り、自衛隊に寄っていったのも国をよくしようという思いからだったし、連合赤軍の人たちの運動も日本の堕落した状況を少しでもよくしようという思いから発したものだった。そして当時は「革命」という言葉は何かを変えていくひとつのキーワードとして若者たちが求めたものであったけれど、監督は「革命」という言葉をあえてなのか使わないです。「革命」って大雑把な言葉なんですよ。「革命」がどうして起こるかという本質は、何らかの「怒り」を感じるからそれを壊さなければならない、変えなければいけないということからで、だから自分はこうするんだというエネルギーが生まれてくる源はというと「怒り」なんでしょうね、監督の解釈だと。

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11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち
監督・製作・企画:若松孝二
企画協力:鈴木邦男 プロデューサー:尾崎宗子 脚本:掛川正幸、若松孝二 音楽:板橋文夫 ラインプロデューサー:大友麻子、大日方教史 撮影:辻智彦、満若勇咲 照明:大久保礼司 録音:宋晋瑞 音楽プロデューサー:高護 編集:坂本久美子 衣裳:宮本まさ江 キャスティング:小林良二 スティール:岡田喜秀
出演:井浦新,満島真之介,岩間天嗣,永岡佑,鈴之助,渋川清彦,大西信満,地曵豪,タモト清嵐,寺島しのぶ
若松プロダクション/スコーレ株式会社/2011年/日本/カラー/120分 ©2011 若松プロダクション
公式

2012年6月2日(土)より全国ロードショー

2012/06/01/20:47 | トラックバック (10)
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