第 71 回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
第 54 回シカゴ国際映画祭 監督賞/女優賞
帰れない二人
2019年9月6日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、
新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
移ろいゆく景色、街、心。それでも、愛し続ける。
総移動距離7,700km! 現代中国を背景に描き出す、
17年におよぶ愛の物語。
中国・山西省の中規模都市・大同(ダートン)。チャオの恋人はヤクザ者のビン。2001年の中国は北京五輪の開催決定など、にわかに活気づいていたが、この大同で、不動産業者の地上げを手伝うなど、仁義の世界に生きる二人は彼女らなりの幸せを求めていた。ある日、ビンは路上でチンピラに殺されかけるが、チャオが発砲し一命をとりとめる。5年後、出所したチャオは三峡ダムによって失われる街・奉節(フォンジェ)へビンを訪ねるが、彼にはすでに新たな恋人がいた。時間は残酷だ。チャオは世界で最も内地にある大都市・新疆(シンジャン)ウイグル自治区のウルムチを目指す。そして2017年がやってくる──。
2001年の大同に始まり、2006年の三峡ダム完成間近の長江中流域の古都・奉節、新疆ウイグル自治区、そしてまた大同へ。北京五輪決定と開催、WTO加盟、西部大開発、エネルギーの変移、三峡ダム完成、四川大地震、上海万博、冬季北京五輪の決定……17年の間に21世紀中国が経験した歴史とともに、総移動距離7,700kmに及ぶチャオとビンの旅路が描かれる。
中国の名匠ジャ・ジャンクー監督最新作『帰れない二人』は、ジャンクー監督のカンヌ出品 5 作目にあたり、カンヌ上映時には「皮肉と華麗さに加え、密かにロマンチックなフィルム・ノワール。ジャ・ジャンクーは中国の偉大な映画作家だ」(テレラマ)、「中国の下層社会を背景に複雑に絡み合うロマンチックな悲劇」(ガーディアン)など、熱狂的に海外メディアに迎えられた。
主人公チャオを演じるのはジャ・ジャンクー監督のミューズ、チャオ・タオ。本作の演技でシカゴ国際映画祭とアジア太平洋スクリーン・アワードで女優賞を獲得した。チャオの恋人ビンには『薄氷の殺人』(15)で第 64 回ベルリン国際映画祭男優賞を受賞したリャオ・ファン。チャオとビン、一組の女と男が辿る 2001 年から 2018 年の18 年間を、変わりゆく中国を背景に丁寧に紡ぎだした。
中国語題「江湖儿女」が示すもの
中国語題「江湖儿女」(江湖の息子たちと娘たち)は、「田舎町の春」(48/原題:小城之春/2002年にティエン・チュアンチュアン監督が『春の惑い』題でリメイク)で知られる中国映画の巨匠監督フェイ・ムーが最後に取り組んでいた企画名から借りました。フェイ・ムー監督が書いたその脚本はのちにチュー・シーリン監督が旅芸人一座の物語“江湖儿女”(52/英題:THE SHOW MUST GO ON)として映画化しました。私の映画はその物語とは何も関係ありませんが、この中国語題をとても気に入っています。“儿女”という言葉は、愛し合い、憎み合う、男と女を暗示しています。“江湖”は“川と湖”という文字以上の意味があり、言葉にするのは難しいのですが、“真に危険な世界”“激しい感情の世界”をも表します。この二語を組み合わせると、世間の流れに逆らおうとする人々、優しさと敵意、愛と憎しみによって生きる人々を想起させます。
『帰れない二人』で描かれる3つの時代と江湖
“江湖”は故郷を持たない流浪の民の居場所です。この映画の一つ目のパートにおいて、山西の裏社会での、新しい世代の台頭と古い世代が抱く危機感として“江湖”が出現します。荒れ果てた土地、寒々しい気候、古びた炭鉱という舞台は西部劇のようでもあります。二つ目のパートは、ダム建設で村ごと消えてしまった長江の三峡ダム地区が舞台です。主人公チャオは人に騙され、その後、人を騙します。社会の片隅で生き抜く術を身に着けるのです。山西に舞台が戻る最後のパートで、ビンは新たな旅に出ます。彼には、内なる激情を解き放つ“江湖”が必要だったのです。そこは、チャオが留まることを選ぶ場所でもあります。
たどり着けない場所
中国の北西部奥地の新疆のウルムチ、チャオが『帰れない二人』の中で決してたどり着けない場所です。おそらく誰にでもそのような、決してたどり着けない場所があると思います。距離の問題だけでなく、新しい人生を送ることはとても難しい。愛や記憶、習慣といった感情の束縛から逃れられないのです。それでも自由になろうともがく時、その結果はその人の尊厳を反映するものになります。
激動の変化を経験した、現代中国のラブストーリー
『帰れない二人』のチャオとビンは、社会の片隅で秩序に刃向かって生きています。彼らの苦境に共感を覚えます。駆け出しの頃の私の人生を思い出すのです。その当時、自分の思うままに社会の真実を表現する映画を作ることは危険でした。そのため、失われた青春と将来についての空想という脚本執筆に没頭しました。この映画は21世紀初頭の中国から始まり、2018年で終わります。私はいつも長い期間にわたる物語に興味がありました。時間には、人々の秘密や物語、経験が保管されています。そこで私は、私が歩んできた48年間の人生を使って、歴史的にも激動の変化を経験してきた現代中国を舞台にしたラブストーリーを語りたいと思ったのです。
2018年4月 ジャ・ ジャンクー
撮影:エリック・ゴーティエ 音楽:リン・チャン
出演:チャオ・タオ、リャオ・ファン
2018年/135分/中国=フランス 原題:江湖儿女/英題:Ash is Purest White
提供:ビターズ・エンド、朝日新聞社 配給:ビターズ・エンド
©2018 Xstream Pictures (Beijing) - MK Productions - ARTE France All rights reserved
2019年9月6日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、
新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
- 監督:ジャ・ジャンク―
- 出演:チャオ・タオ, チァン・ウー, ワン・バオチャン
- 発売日:2015/02/06
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- 監督:ジャ・ジャンクー
- 出演:チャオ・タオ, チャン・イー, リャン・ジンドン, ドン・ズージェン, シルヴィア・チャン
- 発売日:2017/01/06
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