ええじゃないかとよはし映画祭 2019 グランプリ受賞
第 19 回 TAMA NEW WAVE ベスト男優賞受賞
第 16 回うえだ城下町映画祭 実行委員会特別賞受賞
はままつ映画祭 2019 観客賞受賞
Seisho Cinema Fes 2nd ベストロケーション賞、ベストアクトレス賞受賞
向こうの家
その人は、僕の知らない、もう一つの家にいた
自分の家庭は幸せだ、と思っていた高校二年生の森田萩。しかし父親の芳郎にはもう一つの家があった。「萩に手伝ってもらわなきゃいけないことがある」芳郎の頼みで、萩は父親が不倫相手の向井瞳子と別れるのを手伝うことに。自分の家と瞳子さんの家、二つの家を行き来するようになった萩は段々と大人の事情に気づいていく……。
2019年10月5日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラム
ほかロードショー
西川達郎監督 初長編作。
父親の愛人と過ごしたひと夏の体験を、当時 17 才の望月歩が等身大の高校生を演じた本年度必見の青春映画。
日本各地の映画祭で続々受賞、ノミネートされ、好評を博した本作。監督は東京藝術大学大学院で黒沢清監督、諏訪敦彦監督に師事し、本作が 初長編作となる期待の新鋭監督、西川達郎。本作では一見仲睦まじく見えて、やや壊れかけた家族と父親の愛人を巡る物語を、少年の視点で温かさとユーモアを湛えて描いた。
西川達郎監督 コメント
今まで知らなかった事を知り、これまで見えなかった事が見えるようになる事で、人は一歩成長していく。 初めて 触れた出来事に 反発したり、 やがて受け入れたりしながら少年が変わっていく時、周りの大人達も彼らを自分達の方へ迎え入れながら、また 少しずつ変わっていくのだと思います。そんな 成長の物語を家族の中に描きました。 “そんなこともあるさ”と 笑い優しく寄り添ってくれる存在が必要な誰かに、この作品が届く事を願います。
主人公の森田萩を演じるのは望月歩。「ソロモンの偽証」での怪演が注目され、「真田十勇士」などに出演。また2018年にはドラマ「アンナチュラル」にゲスト出演し話題を集める。2019年のドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」ではレギュラー出演して、繊細な演技を見せた。さらに今夏には主演作「五億円のじんせい」が公開されるなど、その演技が常に注目される、当時 17 才の望月歩が高校二年生の萩を等身大で演じる。
父親の不倫相手の向井瞳子を演じるのは、大谷麻衣。大胆なシーンの連続が話題となった「娼年」にて、主人公の娼夫リョウの初めての客ヒロミを演じて話題を集めた。以降ドラマ「相棒」にゲスト出演するなど、続々活躍の幅を広げている彼女が、今作では魅力的かつどこか影のあるヒロイン、瞳子を演じている。
父親の芳郎役には「心魔師」「本牧アンダーグラウンド」などハードボイルドな役を演じてきた、生津徹がコミカルでどこか憎めない父親を好演している。その他キャストとして、南久松真奈、円井わん、植田まひる、小日向星一が出演。いずれも個性的
な登場人物として作品を彩っている。また、瞳子の家の近所の釣り人千葉役を名優でんでんが演じ、脇を固めている。
- 夏のある日、男子高校生が訪れた坂の上の一軒家には、妖艶な美女が囲われていた…というあまりにも危険な匂いのする設定から映画は始まる。しかし、これは決して単純な“ひと夏の経験もの”ではない。奇妙な学友たち、どこかネジの外れた家族、見るからに胡散臭い釣り人…といった人々の登場によって、物語はじわりと常軌を逸していく。西川のストーリーテリングは実にしたたかと言っていいだろう。――黒沢清(映画監督)
- ここではむしろ、見せかけの世界、演じられる家族、非現実的な演技というものが積極的に取り入れられて、喜劇的な呑気さとともに小さな世界が形作られてゆく。しかし、「よく話すことで、互いをよく理解できる」という母親の価値観に牛耳られている家族世界とパラレルに、父親によってもうひとつの家が作り出されていることが発覚する。世界から遊離したような高台にへばりつく「変な家」に暮らす女の暮らしは、長男ハギの見せかけの世界を決定的に崩壊させるのだが、地に足のついた女の暮らしが、逆に彼の世界を再生してゆく。登場人物ひとりひとりの世界は実は断絶しており、みながバラバラの世界を生きているのであるが、映画は誰かを告発することも、否定することも、利用することもなく、救いのない世界を深刻に嘆くわけでもなく、彼ら全ての人に生起する感情を肯定しようとする。やがて女とともに向こうの家も消え去り、ハギの唯一の世界との繋がりも失われるのだろうか。いや、それでも海は輝いている。この薄っぺらな世界を生きる術はまだある、という強い意志がこの喜劇を輝かせている。
――諏訪敦彦(映画監督) - 家族・友達・恋人って 10代の頃の三大日常を見事に切り取っている。80年代を思い出させる、どこか懐かしく、どこか痛い思春期の物語。
――内田英治(映画監督) - ホント、この手は苦手なはずなのに、最後までニヤニヤ見ちゃった。普遍的で、絵作りも落ち着いてるけど、ちょっと破城してるホームドラマ。お話が、建前じゃないのがよかった。派手な展開はないけど、僕みたいなひねくれたおじさんにも、ちゃんと届く青春映画でした。瞳子(トウコ)さん、気になる。――カンパニー松尾(AV監督 映画監督)
- 思い返せば、あのときがあの人に会えた最後だった。顔を思い出そうとすると滲んでしまう。それがたとえ叶わなくても、二度と会えないあの人の姿を残すために映画はあると『向こうの家』は教えてくれる。――杉田協士(映画監督)
- 理想と現実のギャップに慄いても、それを咀嚼したり納得させて貰えるだけの時間は中々与えて貰えない。割り切るか、受け流すことでしかやり過ごせない。だけど、誰もがそんなに器用じゃない。時間をかけないと乗り越えられないことが、世間はそれを良しとしないけど、人生のズル休みや寄り道をしないと気が付けないこともある。そんな不器用で面倒で愛おしい人達の心の機微に胸打たれた。 ――ミヤザキタケル (映画アドバイザー )