スウェーデン映画祭2016
2016年9月17日(土)~23日(金)、渋谷ユーロスペースにて開催
毎年、新旧のスウェーデン映画の逸品を紹介しているスウェーデン映画祭が、今年は9月17日(土)~23日(金)のシルバーウィークに、渋谷ユーロスペースで開催される。今回は、昨年2015年に生誕100周年を迎えた大女優イングリッド・バーグマンにスポットを当て、初期スウェーデン時代の名作『ムンクブローの伯爵』(35)と『間奏曲』(36)、引退作品となった『秋のソナタ』(79)を特集上映するほか、スウェーデンのアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞で作品賞を受賞した3作品(2016年受賞『波紋』(15)、2015年受賞『フレンチアルプスで起きたこと』(14)、2014年受賞『同窓会/アンナの場合』(13))も一挙上映する。
また、スウェーデン映画の現在を伝える「コンテンポラリー・スウェディッシュ・シネマ」では、国内外で話題を呼んだ新作5本(『ヤング・ソフィー・ベル』(14),『ストップ・ウェディング』(14),『ナイス・ピープル』(15),『モダン・プロジェクト』(15),『ビスカン・ミラクル』(16))が上映される。なお、開催前日の16日(金)には『北欧女子オーサのニッポンの再発見ローカル旅』ほかで人気の東京在住のスウェーデン人漫画家オーサ・イェークストロムさんのトークショーとスウェーデンの夏の風物詩であるザリガニパーティーが楽しめる前夜祭が開催されるので、こちらもあわせて注目していただきたい。
上映作品紹介
ゴールデン・ビートル賞特集
スウェーデンのアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞。過去3年の受賞作を一挙上映!
- 『波紋』(監督:マグヌス・フォン・ホーン/2015年/102分)
ガールフレンド殺害の罪で服役していた17歳のヨンは、出所後に地元へと戻るが、復学した学校ではすぐに執拗な嫌がらせが始まる。町の人々は彼の過ちを忘れてはいないのだった。少年犯罪のその後を描いたダークな青春ドラマ。再生を求めながらもそれを赦さない周囲との軋轢の中でもがく主人公を人気ミュージシャン、ウルリック・マンターが演じる。ホーン監督はカンヌ国際映画祭監督週間で鮮烈な長編デビューを果たした。2015 ゴールデン・ビートル賞 作品賞受賞
9/17(土)上映後、主演のウルリック・マンターのトークショー開催 - 『フレンチアルプスで起きたこと』(監督:リューベン・オストルンド/2014年/118分)
仕事人間のトマスは妻のエバとふたりの子供を連れて高級スキーリゾートを訪れる。2日目の昼食時、人工雪崩がテラスを襲う勢いで迫ってくる。エバは子供たちを抱き寄せ夫に助けを求めるが、彼女の目に映ったのは逃げ出す彼の姿だった…。楽しいはずのバカンスが一転。崩壊の危機に陥った家族を、ブラックユーモアを交えながらもスリリングに描く。鋭い観察力で人間の行動心理を炙り出す、オストルンド監督の真骨頂。2014 ゴールデン・ビートル賞 作品賞受賞 - 『同窓会/アンナの場合』(監督:アンナ・オデル/2013 年/89 分)
20年振りに開かれた同窓会。ひとり招待状が届かなかったアンナは架空の同窓会を開き、役者が演じる同級生たちの前で、当時自分が受けたいじめについて赤裸々にスピーチをする。後日、彼女は本物の同級生たちを訪ねてその映像を突き付けるが…。撮影用の同窓会シーンとその後の現実世界の2部構成からなる異色のドラマ。実体験を元にオデル監督自身が主人公を演じている。スウェーデン映画祭2015で多くの話題を呼んだ問題作をアンコール上映!2013 ゴールデン・ビートル賞 作品賞受賞
マスターピース!イングリッド・バーグマン選
2015年に生誕100周年を迎えたイングリッド・バーグマン。
伝説の大女優の転機となったスウェーデン製作の3作品を選出。
- 『秋のソナタ』(監督:イングマール・ベルイマン/1978年/92分)
ノルウェー北部で夫と暮らしていたエヴァは、恋人を亡くした母シャルロッテを自宅である牧師館へ招く。7年振りの再会を喜ぶ母娘だったが、エヴァが幼い頃から抱いていた憤怒を吐露し始めると、シャルロッテもまた本心を露わにするのだった。抑圧されて育った娘と国際的なピアニストとして華やかな人生を送る母との愛憎劇。世界的巨匠ベルイマンと初タッグを組み、渾身の演技を見せたバーグマンは、本作をもって映画界引退を宣言した。 - 『間奏曲』(監督:グスタフ・モランデル/1936年/88分)
前途有望なピアニストのアニタは、ピアノの家庭教師をしている。ある日、教え子の父である有名なバイオリニストのホルガーに才能を見初められ、やがてふたりは恋に落ちるが…。バーグマンは悩みながらも道ならぬ恋に溺れていくヒロインを好演。それが『風と共に去りぬ』などの名作を手掛けたプロデューサー、デビッド・O・セルズニックの目に留まり、本作のリメイク『別離』の主演でハリウッド進出を遂げる。 - 『ムンクブローの伯爵』(監督:シグルド・ヴァレーン、エドヴィン・アドルフソン/1935年/88分)
ストックホルムの旧市街地、ムンクブロー。詐欺師や酒の密輸業者が住む安宿に、身なりの良い見知らぬ青年が現れる。宿で働くエルサは、世間を騒がせている宝石泥棒ではないかと疑念を抱きながらも、彼に惹かれていくのだった。一癖も二癖もある下町の人々の生き生きとした姿をコミカルに描いている。19歳のバーグマンが本格的なスクリーンデビューを果たし、その才能を開花させた。健康的な初々しさの中にも、美しい大人の色気をのぞかせている。
コンテンポラリー・スウェディッシュ・シネマ
全てジャパン・プレミア上映!国内外で話題の新作を厳選!
- 『ストップ・ウェディング』(監督:ドラゼン・クーリャニン/2014年/72分)
元カレの結婚式を阻止するため、マルメからストックホルムへと向かう列車に乗り込んだアマンダ。偶然乗り合わせたフィリップと会話を交わすうちに、ふたりの目的が同じであることが明らかになる。コンパートメントという密室で展開される会話劇は、列車がマルメからストックホルムへと走行する約5時間で撮影された。過去の恋にピリオドを打ち、新たな一歩を踏み出すまでをスタイリッシュな映像と音楽で綴ったラブロマンス。 - 『ヤング・ソフィー・ベル』(監督:アマンダ・アドルフソン/2014年/85分)
幼馴染のソフィーとアリスは、高校卒業後にベルリンで暮らす約束をしていた。しかし、アリスはひとりで旅立ち、そのまま忽然と消えてしまう。ソフィーは事の真相を探るため、ベルリンへと向かう…。親友の痕跡をたどる旅が、彼女の人生を変えていくのだった。大人になりきる前の少女たちの危うさを幻想的な映像で、ミステリータッチに描く。ストックホルム映画祭の女性監督支援プロジェクトにて、本作の企画が最優秀賞を受賞。映画祭の出資を受け製作された。 - 『ナイス・ピープル』(監督:カリン・アヴ・クリントベルグ、アンデシュ・ヘルゲソン/2015年/96分)
内戦を逃れ、スウェーデンの田舎町ボーレンゲで暮らすソマリアの若者たち。彼らと地元住民とのトラブルの数々を見かねたある事業家が、スポーツで友好的に問題を解決することを思い付く。かくしてソマリア初のバンディ代表チームが結成され、世界選手権を目指しての特訓が始まる。バンディとは、アイスホッケーの起源とも言われる氷上競技。壮絶な過去を抱えた若者たちがバンディを通して成長していく姿を追ったドキュメンタリー。 - 『モダン・プロジェクト』(監督:アントン・カルロート/2016年/82分)
心理学専攻の学生サラとシモン。先進諸国で人々を蝕む孤独感の原因を突き止めた彼らは、検証のために人里離れた一軒家で若者グループと共同生活を始める。当初は純粋な学問的実験だったが、シモンに権力欲が芽生えるとグループ内に歪みが生じ始める。集団における人間の心理をアイロニックに描く。監督と主演のふたりから成る映像制作ユニットÖGATの長編第一作。演劇特有の手法を取り入れた斬新な映像表現が注目を集めている。 - 『ビスカン・ミラクル』(監督:ヨン・O・オルソン/2015年/106分)
ビャーネとマーリン夫妻は引越し会社を営んでいるが、経営はいつも火の車。ビャーネは川向うに住む妻の父親とは折り合いが悪く、20年会話を交わしていない。ある日、会社の借金の保証人になってもらうため、マーリンは意を決して父親に会いに行くが…。彼女の決断が確執を抱える家族と町の人々に変化をもたらしていく。ユンガ川沿いの町ビスカンを訪れたオルソン監督がその地にインスピレーションを得て脚本を書き上げたドラマ。