インタビュー
『追い風』安楽涼監督画像

安楽 涼 (監督)
映画『追い風』について【1/5】

公式サイト 公式twitter

2020年8月7日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!

『1人のダンス』がスマッシュヒットを記録した安楽涼監督の新作『追い風』が、8月7日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて公開される。地元・西葛西の街を舞台に、親友のラッパー・DEGの実人生での体験を基に描いた青春映画。私生活も音楽活動もうまくいかず、笑顔の下に負の感情を隠して迷走するDEGを、手持ちのカメラがひたすら追いかけ、ドキュメンタリーのように臨場感あふれる映像が、観客にDEGの五感を体感させる。悔しさ、惨めさ、苦しさ、そして胸の高鳴り……。音楽の力によって彼が人生を一歩踏み出す多幸感に満ちた瞬間をぜひ目撃してほしい。仲間愛と映画愛にあふれ、この映画作りの中で自身もさまざまな気づきを得たという安楽監督のインタビューをお届けする。 (取材:深谷直子)
安楽 涼 東京都江戸川区西葛西出身。18歳のときに役者としてキャリアをスタートし、その後、自分が出演したいが為に映画制作を始める。自ら立ち上げた映像制作ユニット「すねかじりSTUDIO」では、映画やMVの監督として活躍。主な監督、出演作に『幸せ屋』(監督・出演)、『弱者よ踊れ』(監督・出演)、『モーメント』(金井純一監督)、『ブンデスリーガ』(太田達成監督)、『恋愛依存症の女』(木村聡志監督)などがある。監督作4作目となる『1人のダンス』で下北沢映画祭入選、MOOSIC LAB 2018 【短編部門】男優賞受賞を果たし、期待の若手俳優・監督として今後の活躍に注目が集まる。
STORY ミュージシャンの DEG は誰にでもどんなことがあっても笑う。誰も傷つけたくない、だから笑う。そうやって自分自身を傷つけてきた年齢は 28 歳。身の回りの人はそれなりに幸せを掴みかけている。人に合わせ愛想笑いをする出倉はアーティストとしては評価されずにいた。そんな時、友達の結婚式の知らせがくる。そして、その式には、ずっと好きだったひかりが来るとの事だった。
安楽涼監督画像1
――『追い風』は、安楽監督の劇場デビュー作の『1人のダンス』(19)同様、地元である西葛西での人間関係を元にしたストーリーを本人たちが演じている作品で、続編とも言えますね。MOOSIC LABの参加作品であるというのも前作と同じですが、製作の経緯から教えていただけますか?

安楽 去年、この映画の元になった結婚式での出来事があったんです。DEGが友達の結婚式でライブを頼まれて、その曲を結婚式で久しぶりに会える好きな人のために書くという。撮影を頼まれた僕だけがその想いを知っていて、最初はなぜそんなことをするのかまったく理解できなくて。DEGはその後もたくさん恋愛をしてきたわけだし、なんで今さらその子に?と。結婚式の主役ではない人に向けて曲を作るというのも、まったくまわりには伝わらないことで。でも進むにつれて、何の希望もないものに突っ走っているDEGがものすごく魅力的に見えてきて。僕が20年以上付き合ってきた中で初めて見る姿に感動して、「僕はこれを映画にしよう」と決意しました。MOOSIC LABはたまたまです。別の企画コンペに出したんですけど落ちてしまって、そしたらMOOSIC LABから「参加することになっていた監督がひとり降りて、企画が間に合わないから『1人のダンス』を上映させてくれないか?」という話があって。イベントの2、3カ月前のことだったんですけど、その場で「実はこういう企画があるから作らせてください」って言って。脚本の執筆から完成まで3カ月なんです。すごい急ピッチです。

――本当ですね、その時点で企画はできていたとはいえ。

安楽 大元のやりたいことはしっかりしていたので、それを脚本に起こして。8月からそれをやり始めて、9月、10月で撮影しました。

――DEGさんの熱い姿を見るのは結婚式のときが初めてだったとのことですが、普段は映画と同じように笑って自分を抑えてしまう感じなのですか?

安楽 そうです。笑ってごまかすことなんて僕もいくらでもあるんですけど、大事なことではそれができなくて、そういうとき僕は怒ったり人と揉めたりしてしまうんです。DEGは僕と真逆で、何かあっても「寝たら忘れるから」とか言って、本当に大事な瞬間もずっと笑っている。そんなDEGを20年間見てきてて、心の底ではまったく理解できなかったんですよね。でも、結婚式で曲を作るとなったときのDEGのあふれんばかりの気持ちは、そんな僕すらも巻き込まれてしまうほどの力があった。僕がその瞬間を目の当たりにしたこのDEGを映画にしたら、何か一つでもミュージシャンとしてのDEGの追い風にならないかな、と思って、それでタイトルを『追い風』にしたんです。

――『1人のダンス』は自分が主人公だったから、映画のために素のかっこ悪い姿をさらけ出すのも、まあやるしかないことなんですけど、今回は他人であるDEGさんに欠点をつきつけることになりますよね。それってDEGさんにはとても酷なことだし、監督のほうでも気がひける嫌なことだったのではないでしょうか?

安楽 マジで大変でしたね。理解できないとは言いながらも、DEGはDEGだから喧嘩なんてしたことがない。僕が怒ってもDEGは笑ってて、みたいな関係だったので、DEGに強く何かをつきつけるみたいなことは初めての出来事で。

『追い風』画像
――映画の中で、まわりの人たちは悪気ない感じでDEGさんに結構きついことを言うのですが、実際言われやすいタイプだったりするのでしょうか?

安楽 劇中ではみんなDEGにきついことを言っているように見えて、単におのおのの道を進んでいっているだけなんですよね。結婚するとか、僕だったら映画を撮ろうとしているとか、関口アナンさん演じるプロデューサーとかも、それぞれが向かうものを持っていて、DEGに対しては思うことを普通に、あるいはむしろDEGのためを思って言っているんです。でもDEGには彼らから取り残されているという思いがあって、その言葉が過剰に響いてしまう。人が輝けば輝くほど「自分はダメだ」と思う気持ちが浮き彫りにならないかなあと思って、演出でこうしています。実際の生活の中では、DEGとしゃべってる人はみんな楽しそうだなあといつも思ってて。DEGにはなんか人を巻き込む力があって、人を楽しませたい、笑わせたいと常に考えているパフォーマーなんですよね。それをそのままやった上に、僕がDEGに思っている「なんで笑ってごまかしているんだよ」っていう気持ちを足していったら、DEGは、ちょっとおこがましいんですけど、「自分はなんで笑うのか?」とか撮影中に考えてくれるかなと。笑うことはDEGの魅力でもあるんですけど、僕も他人を主人公にして映画を作るなら、それを超えたものを撮らないといけないなと。僕すら知らない姿をこの映画の中で撮れたら、ほんの一歩でもDEGが進んでくれないかなと思って。僕の中ではこれはDEGに対する気持ちだけで撮ったような映画なんです。答えは示さないで撮ろうと決めていたので、スタジオでDEGとギタリストの藤田義雄さんがセッションしているシーンは、ト書き4行ぐらいしかないんですよ。「歌う」「やめる」「歌う」だけとか。

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追い風 (2019年/日本/カラー/DCP/アメリカンビスタ/ステレオ/71分)
出演:DEG,安楽涼,片山享,柴田彪真,関口アナン,サトウヒロキ,大友律,大須みづほ,ユミコテラダンス,
柳谷一成,アベラヒデノブ,吉田芽吹,山本奈衣瑠,髙木直子,宮寺貴也,マックス,藤田義雄,木村昴,RYUICHI
監督:安楽涼 音楽:DEG 脚本:片山享,安楽涼 プロデューサー:山田雅也 撮影:深谷祐次
録音:坂元就,鈴木一貴,新井希望 助監督:太田達成,小林望,登り山智志 ヘアメイク:福田純子
ウェディングドレス制作:磯崎亜矢子 スチール:片山享 ハルプードル 装飾:JUN 題字・広告デザイン:広部志行
宣伝協力:髭野純 企画:直井卓俊 特別協賛:黒川和則 製作・配給:すねかじりSTUDIO
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2020年8月7日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!

2020/08/02/15:11 | トラックバック (0)
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