04年9月特集/珈琲時光
2003年 日本
監督 侯孝賢
脚本 侯孝賢
朱天文
出演 一青窈
浅野忠信
萩原聖人
余貴美子
小林稔侍 他
<< 作品概要 >>
フリーライターの陽子(一青窈)と、神保町の古書店の2代目主人・
肇(浅野忠信)は、陽子が資料を探すために古書街を訪れているうちに親しくなった。陽子は、
無口で穏やかな肇には、なぜか何でも話せてしまう。物静かな肇といると、
不思議と心が落ち着くのだ。お盆のお墓参りのため高崎の実家へ帰った陽子は、
そこで自分が妊娠していることを両親に告げる。突然の告白に、二人は驚き戸惑いを隠せない。
東京に戻った陽子は、肇に取材を手伝ってもらっている最中に気分が悪くなり、
肇にも妊娠を告げる。肇は動揺するが、自分の気持ちを伝えられない。ある日、
知人の葬儀に出席するため、両親が東京に出てくる。陽子の部屋で、
二人は気になっている陽子の妊娠のことを切り出すが――。
2005/05/01/12:38 | トラックバック (0) | 珈琲時光 ,中川泰典 ,今月の注目作
珈琲時光
(2003 / 日本 / 侯孝賢) 優しいまなざしに身を預けたい 膳場 岳人 夏の透明な光があふれる画面の中で、我を張らない人々が穏かな表情でたたずみ、微笑やさりげない言葉をかわし合う。 人と人とのあいだでかわされる感情の機微を、目に見えないほど繊細に、自由に積み上げた、侯孝賢の快作である。 台湾人男性の子を身ごもったフリーライターの陽子(一青窈)は、若き古書店店主・肇(浅野忠信)と友人同士。 しばしば珈琲店に足を運んでは、他愛のないおしゃべりに花を咲かせる。そんな陽子に不安顔の育ての両親(余貴美子、小林稔侍)。 しかし彼女は周囲の心配をものともせず、町から町、電車から電車へと移ろい、日々をのどかに過してゆく。 帰省する娘を、駅前に乗り付けた車から降りてじっと待つ父親役の小林稔侍。その愚直な立ち姿は、親の愛情というものを無条件に納得さ 続きを読む
2005/05/01/12:36 | トラックバック (0) | 珈琲時光 ,膳場岳人 ,今月の注目作
珈琲時光
(2003 / 日本 / 侯孝賢) コーシータイムは30分にしてね 百恵 紳之助 あの「童年往事」の!あの「川の流れに草は青々」の!あの大好きな侯孝賢が、 小津安二郎大先生の生誕百年を記念して撮ったというなんだかとても記念記念した作品だ。 冒頭、ヒトトヨウがなにやら電話で話している後ろ姿が映し出されている。 電話の内容とその口調にいささか辟易しながらあまりに長いシーンなので別のことを思い出す。「無能の人」 で竹中直人を説教する風吹ジュンの後ろ姿である。あ、でもあの後ろ姿は腰のあたりが中心だったか。まあ、いい。 あの風吹ジュンの後ろ姿は母性と妙なエロさが混じっていてとても良かったなあ。 ヒトトヨウが浅野忠信演じる古書店主のいる古本屋に行く。何だか会話があまり聞こえてこないのだが、 さっきの電話のおしゃべりの続きのようだ。あまり盛り上がっ 続きを読む
2005/05/01/12:35 | トラックバック (0) | 珈琲時光 ,今月の注目作 ,百恵紳之助
珈琲時光
(2003 / 日本 / 侯孝賢) 日常から遊離した風景が醸し出す心地好い『日常性』 仙道 勇人 本作のタイトル『珈琲時光』が、「(珈琲を飲むことで)気持ちを落ち着け、 心をリセットするひととき」といった意味であることを知った時、筆者は軽い驚きを覚えた。世のコーヒー好きなら誰でも承知しているであろう、 あの"至福感"を表す言葉があることにちょっとした嫉妬を感じたのだ。それが仮に侯孝賢の造語かもしれないにしても、である。日本語には 「時光」のように直截的な表現はないにしても、「ちょっと一服」という言葉/言い方にはそれに似た含意があるように思う。しかし、 隣近所に声を掛け合い、気軽に「ちょっと一服」していくような御近所付き合いの風景は、思えば失われて久しいのではないだろうか。 本作にはそうした失われた風景や失われつつある風景がそこかしこにちり 続きを読む