佐藤 寿保監督/『眼球の夢』

佐藤 寿保 (監督) 映画『眼球の夢』について【5/5】

2016年7月30日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

公式サイト 公式twitter 公式Facebook (取材:深谷直子)

――そういう独特な世界観の中で俳優さんたちが生き生きと演技をしていて、特に万里紗さんの表情豊かなお芝居に魅せられました。エロティックなシーンにも体当たりされていましたが、どんなふうに演出したのでしょうか?

佐藤 彼女は感受性豊かだからね。お任せですよ、抑えるのが大変だったというか(笑)。いや本当に、基本的にトータルで芝居を考えるから、ひとつ変えると他の場面とのバランスが崩れてきちゃうところがあってね。役柄を演じるのは役者なわけで、あまりにも違う芝居をしていたら「何を考えてるのあなた?」ってなるだろうけど、さっきも言ったように「ああしなさい、こうしなさい」ということはしないです。

――麻耶とリエの女性同士のラブシーンは目隠しをしているのがとても印象的でした。

佐藤 そうですね。お互いに目隠しをして触覚で感じ合うみたいな、闇の中で相手のことを感じるみたいな。それっていうのは今回の「視覚」というテーマの中で、目の開いた状態とのまたこれも対比なんだけど。それはそれで面白くできたんではないかなと思います。

――また、今回も残虐な描写に容赦がありませんでしたが、恐怖を描く上で意識したのはどんなところですか?

佐藤 そうですねえ、表面的なスプラッター描写ではなくして内面的なモダンホラーというのかな? 『華魂 幻影』は直接的な恐怖だったけど、今回は狂気によって自分自身が分からなくなってしまう、平衡感覚さえ失って、夢なのか現実なのかも分からなくなってしまうという恐怖をやろうと思ったんですよね。頭で考える恐怖じゃなくて、脳みそから切り離された眼球が街を彷徨ってしまう感覚みたいなね。

――ああ、今回はそこも「視覚」に特化しているというか。

佐藤 そう、自分にも「どうなるんだろう?」って興味があるしね。昔読んだ小説か漫画に、夜眠っている間に左手が勝手に動いて悪さをする、というものがあって、そういう感覚をやりたいっていうのもあったんだろうかなあ? それは小説とか漫画だから抽象的な描写の仕方だし、手だと面白くないっていうのもあって、映像として表現するときは、現実なのか?夢の中でそういう光景が現れたのか?という、そこらへんをやろうとしたんですよね。……抽象的な言い方をして、かえって難しくなったかもしれないけど。逆効果だったかな(苦笑)。

――いえいえ、いろんなことを試されているんですね。観る側でも本当にいろんなことを感じさせられるんですが、なかなか今こういう映画もないし、観ていると自分の感覚が彷徨い出すようなところがあって純粋に面白かったです。

佐藤 観る人によって捉え方とか感じ方が全然違うと思うんだけど、そういう「感じる映画」がやりたかったんだなあ。理屈ではないところのさ。

――そうですね。『華魂 幻影』とは本当にまったく違うんですけど、やっぱり映画ならではの体験ができるというところでは通じているなあと思いました。

佐藤 寿保監督2佐藤 特に今回は「眼球映画」なので、「目から鱗が落ちる」という映画をやってみたいというのがあってね。ははははは。

――(笑)。はい、それはもう。美しさだけで目の保養になりましたし、これぞアヴァンギャルドという世界を楽しみました。多くの方に体感してほしいですね。

佐藤 映像には非常に凝りましたし、チラシだとかの宣伝文句には「ビザール感覚」という言葉を使っているんですけど、性差関係なく楽しめると思うので、特に女性の方に観てもらいたいと思いますね。『華魂 幻影』のときにも言ったことだけど、そんじょそこらでお目にかかれる映画ではないと思うので、理屈抜きに観てほしいです。で、驚いてほしいです(笑)。より多くの方に「感じて」もらいたいですね。

( 2016年7月28日 渋谷・シアター・イメージフォーラムで 取材:深谷直子 )

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眼球の夢 2016年/日米合作/カラー/DCP/102分
出演:佐藤 寿保、桜木梨奈、中野剛、PANTA、小林竜樹、佐川一政、シャイリー波輝、川瀬陽太、和女
監督:佐藤寿保 脚本:夢野史郎 撮影:御木茂則 照明:松隈信一 録音:植田中 美術:林千奈
音楽:田所大輔 田辺裕己彦 編集:鵜飼邦彦 音響効果:丹雄二 カラーグレーディング:広瀬亮一
衣装:小海綾美 ヘアメイク:ビューティ★佐口 特殊造形:百武朋 助監督:伊藤一平
制作担当:太田勝一郎 キャスティング:小林良二 スチール:土屋久美子 蒔苗仁 題字:舛田忍
ラインプロデューサー:金森保 共同プロデューサー:矢島仁
プロデューサー: ヴェレナ・パラヴェル、ルーシァン・キャスティーヌ=テイラー、坂口一直
制作プロダクション:キリシマ1945 共同研究:東京工芸大学映像表現研究室 
特別協力:フジヤエービック 製作:アレット・トン・シネマ スタンス・カンパニー 配給・宣伝:太秦
© 2016 Arrete Ton Cinema, Stance Company
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2016/08/09/21:35 | トラックバック (0)
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