井口 昇 (監督) 映画『スレイブメン』について【2/6】
2017年3月10日(金)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国ロードショー!
公式サイト 公式twitter (取材:深谷直子)
――ストーリーはすごく複雑怪奇ですよね。監督の作品はシュールなお話が多いですけど、これは現実と脳内世界が錯綜していくというもので。
井口 裏理由のひとつとして、今マーベルのヒーローものとかがあり、日本でもヒーローものは多いんですけど、視覚的なスペクタクルでは当然大作には勝てないので、こちらとしては話にツイストがあるというか、物語でのスペクタクルみたいなところを作っていけば、予算がなくても観る人を引っ張っていけるんじゃないかな?と思ったんです。
――敵を脳内から消去してしまうヒーローのアイディアはどうやって生まれたのですか?
井口 いろいろな理由があってひとつの形になったんですけど。まず僕は元々自主映画出身なんですけど、昔は自画撮りなんて一部の映画オタクしかやらなかったのに、今SNSがすごく流行っていて、映像が女子高生やアイドルにまですごく身近な存在になっているなと思っていて。で、今の世の中って映像で人を死なすというか、リベンジ・ポルノだったり、芸能人のプライベートを週刊誌が暴露したり、映像ひとつで人の運命を変えることができるんだなあと思って。そういうのをヒーローものに取り入れられないかな?と思ったんですよね。銃とかの武器を使わなくても、今の世の中って情報で人の運命を変えることができるなあと。僕はこの作品の前に自主映画を撮る人たちの映画を何本か連作のように作っていて、『ブルーハーツが聴こえる』(2017年4月8日公開)とか、インディーズで撮った『キネマ純情』(16)とかなんですけど、元々興味があった「撮る/撮られる」という関係性が、より世の中で重要なアイテムになっているというか、今の世の中を象徴するものになっているなあとすごく思うので、それをヒーローものに活かせるんじゃないかと思いました。
――かなり社会派なんですね。
井口 そうですね、ブラックユーモアというか、社会風刺的なものを込めた作品にしたいなと。自分自身ではそういうことに興味があるんですよね。あとは自画撮りをするナルシストなヒーローがいたら面白いかなあと(笑)。今までにないヒーローものにするには大きい組織、巨大な悪を敵にはできないと思ったんですよね。じゃあ何と闘うのかな?と考えたときに、個人の闘い、自分の中の善と悪の闘いだったり、運命との闘いだったり、そういうことなんじゃないのかな?と思って。トランプ政権が出てきたりして世の中も大変なことになっているけど、SNSで自分が思っていることをすぐに世の中に発信できてしまい、書いちゃいけないことを書くことであっという間に誰かの運命が変わってしまうかもしれないということに危機感を感じていて。今の若い人がもし非常に大きな力を持ったとしたら、世の中のために闘うというよりも、個人のために闘うんじゃないのかな?と思ったんですよね。好きな女の子に近付くためだとか、嫌いなヤツを消したいだとか、個人的な理由で能力を使ってしまうんではないかなと。「自分の中の敵」というのでヒーローものに新しい広がりができるんじゃないかなと思いました。
出演:中村優一,奥田佳弥子,味岡ちえり,岩永洋昭,小田井涼平,部亮平,津田寛治
監督・脚本:井口 昇
主題歌:BRATS「脳内消去ゲーム」 エグゼクティブプロデューサー:菅野征太郎、余田光隆
プロデューサー:青木亨、坂岡功士、麻生英輔、福井真奈 撮影:ふじもと光明 録音:小林圭一
美術:池田正直 特殊造型:奥山友太 スレイブメン衣裳:梅森充 アクション監督:カラサワイサオ
衣裳:ヨシダミホ ヘアメイク:リョータ VFXスーパーバイサー:鹿角剛
モーショングラフィックデザイナー:野島達司 VFX:アーティスト:大畑智也 整音:湯脇房雄
音響効果:井上奈津子 編集:デモ田中 キャスティング:北田由利子 助監督:伊藤良一、冨田卓
制作担当:榎本靖 音楽:福田裕彦 企画:G-STAR.PRO
製作:2016「スレイブメン」製作委員会(GUILD、TBSサービス)
制作:ワンダーヘッド 配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS ©2016「スレイブメン」製作委員会
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