インタビュー
大川五月監督/『リトル京太の冒険』

大川 五月 (監督)
映画『リトル京太の冒険』について【1/6】

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シアター・イメージフォーラムにて4月28日まで絶賛上映中!/名古屋シネマテーク、京都・立誠シネマにて5月27日(土)より上映 以降、全国順次公開予定

NYコロンビア大学などで映画制作を学び、数々の短編映画ですでに国際的に高い評価を受けている大川五月監督が、『京太の放課後』『京太のおつかい』という短編の完結編として作った初の長編映画『リトル京太の冒険』が、シアター・イメージフォーラムにて公開されている。自然に囲まれ、街並みにも懐かしさの残る田舎町で、いろいろな人との交流を通して成長していく小学生の京太の物語。鮮やかな黄緑色の頭巾をかぶる姿はあどけないが、心の中は心配でいっぱいで、彼の子供らしい素直なふるまいは大人たちを困惑させ、小さな事件を重ねながらお互いの事情を知っていく。ほのぼのとしたあたたかいユーモアにあふれながら、しっかりと人生を突きつけ、成長の素晴らしさとほろ苦さを噛み締めさせてくれる良質の人間ドラマだ。二人の子役と国際色を感じさせる大人の俳優たちも生き生きとして魅力的。大川五月監督が描くおおらかで優しい世界をぜひ味わってほしい。6月に出産を控え、おだやかな笑顔が輝く大川監督に、映画作りについてうかがった。 (取材:深谷直子)
大川五月 東京生まれ。日本大学芸術学部、NY コロンビア大学大学院で映画制作を学ぶ。コロンビア大の卒業制作『タイディ・アップ』(11)は国内外の様々な映画祭で上映され、ハリウッドの映画祭では最優秀短編映画賞を受賞。2012年、桐生青年会議所のインセンティブプロジェクトとして短編『京太の放課後』(12)が完成。同作は南米最大のブラジルはサンパウロ国際短編映画祭で観客が選ぶベスト 10、ギリシャ、カタールなどの映画祭で最高賞を受賞。国内では、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ショートフィルムショーケース部門の優秀実写賞とスポンサー賞のサプライズ実写賞をW受賞、下北沢映画祭のグランプリなど、国内外の映画祭で好評を博す。2013 年、Jリーグ20周年記念のショートフィルム『旅するボール』(13)の監督・脚本に抜擢。完成後、カンヌ映画祭ショートフィルムコーナーを始め、多くの映画祭で上映。翌年には京太シリーズ続編『京太のおつかい』(14)の発表後、レクサスと米国の映画会社ワインスタイン社が手がける短編映画プロジェクト「Lexus Short Films」の監督に抜擢され、『Operation Barn Owl』(14)を手掛けた。本作『リトル京太の冒険』(16)が長編デビュー作。
STORY あの日以来、どこに行くにも防災頭巾を手放さない桐生に住む12 歳の少年・京太。再び自分たちの町に戻ってきた大好きな外国人英語教師ティムと単語帳を片手にカタコトの英語で会話をするのを楽しみにしている。そんなある日、アメリカからモリーという女性がやってくる。海外からきた訪問者に沸く京太たちだったが、そこには重大な問題が。ショックを受けた京太はある行動に出るが、それは彼ら二人だけでなく、京太の母・絹子や周囲の人々が、震災後にそれぞれの心の奥にしまっていた記憶を呼び起こすことになる……。
大川五月監督1
――『リトル京太の冒険』は『京太の放課後』(12)、『京太のおつかい』(14)という2本の短編を発展させて作った初の長編作品になりますね。まずはシリーズ1作目の『京太の放課後』を撮ることになった経緯から教えていただけますか?

大川 NYのコロンビア大学を卒業した後に、桐生市の青年会議所の方々が主催している映画祭が短編の企画を募集しているから応募してみないかというお話をいただきました。その映画祭は町おこしの一環として開催されているもので、そのときが2年目だったんですが、桐生市内で短編を何本か撮るということをされていて。企画を送ったら滑り込みまして、それで撮ったのが『京太の放課後』です。

――そうなんですか。『京太の放課後』は震災を題材とする物語ですが、桐生市は被災地というわけでもないですよね。

大川 そうですね。町おこし映画ってやっぱり町おこしの話になると思うんですが、私の書いた話は町どころか日本を出たいと思っている男の子の話なのに、本当によく通ったなあと思って(笑)。その年は元々2本しか製作の予定がなくて、そのうちの1本はそのときもう撮ることが決まっていたらしく、残りのもう一本にはやっぱり町おこしらしい桐生市の職人さんのお話が選ばれました。でも、私は応募するときにコロンビア大学の卒業制作として作った『タイディ・アップ』(11)という作品も一緒に送っていたのですが、それを気に入ってくださって、「じゃあこの監督にも撮らせてみよう」と、みなさんのポケットマネーから徴収して私の分の製作費に充ててくださったそうです。「よく選んでいただけたなあ」と今でも思うんですが、そこで作った『京太の放課後』は日本でも海外でもいろんな映画祭に入れていただいて、それで桐生のみなさんに喜んでいただいて、今でも行くと一緒に遊んでくださいます(笑)。

――そうだったんですか。その後、『京太のおつかい』、そして今回の長編へと続いていきますが、それもどこかからお話をいただいて作られたのですか?

大川 短編2本は両方とも外からの企画に乗る形で作ったものだったんですね。『京太の放課後』は今お話した桐生の経緯がありました。その後『放課後』はゆうばり国際ファンタスティック映画祭で賞をいただき、スカラシップのような感じで翌年も新作を上映できるという権利を得て、「じゃあ続編を撮ってみたら?」と言われて「その手があったか」と作ったのが『京太のおつかい』です。『おつかい』は作品としては気に入っているんですけど、作り終わったあと、自分では「やり切れていないな」と思う部分もあって。主人公が旅を通して成長していく、変化していくというところに映画の流れとしての醍醐味があると思うんですけど、この京太くんはあんまり変わらないんですよね。彼が持っている悩みやトラウマに考えさせられるというのはあるんだけど、彼自体が大きく変わるというのがないなあと思っていて。あとは清水美沙さんが演じるお母さんの絹子が報われなくてかわいそうだなというのもあって。1作目では子供の不安に気付かされる親、2作目ではその不安に気付かされたあとに「どうすればいいんだろう?」と悩んでがんばる親という形で、お母さん像としては素敵なんだけど、どこかで報われたらいいのにな、と思う気持ちがすごくあって。それで2本目の脚本を書いたときに清水さんにお見せしたら、感想のひとつに「京太はまだ頭巾を脱がないのか」というのがあって、「そうか!」と思って。私には京太が頭巾を脱ぐという発想が全然なかったんですね。観ている人にとっては頭巾を取ってほしい、それって京太にとってはどういう意味があるんだろうか、どうなったら京太は頭巾を取るんだろうか……、というのをずっと考えて、それと京太の成長を結び付けられないかな?と考え始めたのが長編のきっかけですね。だから短編2本は他からのお話で作りましたけど、長編は誰に頼まれたわけでもなく作りました。

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リトル京太の冒険 (82min|DCP|5.1ch|日本|2016)
出演:土屋楓,清水美沙,アンドリュー・ドゥ,木村心結,眞島秀和,ステファニー・トゥワイフォード・ボールドウィン ほか
監督・脚本・編集:大川五月
プロデューサー:杉浦青 音楽:HARCO
撮影:千葉史朗 照明:上野敦年 録音:長村翔太 美術:宇山隆之 助監督:清水艶
製作:リトル・ネオン・フィルムズ 制作プロダクション協力:テトラカンパニー
特別協力:わたらせフィルムコミッション,桐生市,みどり市,公益社団法法人 桐生青年会議所
特別協賛:コトプロダクション 配給:日本出版販売 宣伝:キャットパワー ©2016 Little Neon Films
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名古屋シネマテーク、京都・立誠シネマにて5月27日(土)より上映
以降、全国順次公開予定

2017/04/11/13:31 | トラックバック (0)
深谷直子 ,インタビュー
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