吉川 久岳 (監督)
宮崎 大祐 (脚本担当)
映画「ひきこさんの惨劇」について
2013年8月2日(金)21:10~オーディトリウム渋谷にて1日限定レイトショー
Jホラーに新風を吹き込んだ『Not Found』シリーズの仕掛け人である気鋭、吉川久岳監督の新作『ひきこさんの惨劇』が、今夏、オーディトリウム渋谷で限定公開される。脚本を務めたのは、昨年『夜が終わる場所』でインディペンデント映画界を席巻した宮崎大祐。2011年、東日本大震災の余波のなかで企画が持ち上がり、幾度かの中断を挟んで書き接がれたという本作に、両人は如何なる思いを込めたのか?詳しくお話を伺った。(取材:後河大貴)
ホラーシリーズ『Notfound』では、一話10分という短編ホラーのフォーマットを確立し、日本国内のホラーマニアに人気のシリーズとなり、現在シリーズ11まで好評レンタル中。
Introductuion 2011年3月11日に起こった東日本震災。震災直後からネット上に飛び交った様々な噂の数々。それらの根も葉もない噂は、ネットを通じて瞬く間に広がった。また多くの人がその噂を語る事で不気味なリアリティを持つ様になり、震災後の人々の心に濃く暗い影を落とす事になった。
この映画は、震災後ちょうど1年が過ぎた日本を舞台にし、巨大なシステムが機能不全に陥り、日本中に蔓延していた、いつどこで何が起きるか分からないと言う底知れぬ不安と、得体の知れない恐怖を、ヒキコという人々の噂が作り出した新しい化け物をモチーフに描いている。
総予算150万円。撮影日数5日間 超低予算、超短期間撮影で作られた新世代ジャパニーズホラー!
吉川久岳監督――吉川監督と宮崎さんは、どういった経緯で出会われたんでしょうか?
吉川 出会いは……かつて東映で監督職をやってらした内藤誠監督が、数年振りに『明日泣く』という作品をお撮りになりまして、自分は制作部として参加していました。2010年の夏頃から撮影を開始して、その後ずっとポスプロをしていたところ、出資者兼プロデューサーの方から、「追撮できないか」という要望が出て。しかし、元々のスタッフは既に現場に出て散り散りになってしまっている。そこで、カメラマンの月永雄太さんが、空いている助監督をということで、宮崎さんを呼んできてくれたんです。
宮崎 2011年の正月早々、恵比須で地震の映画を見た帰りに月永さんから電話があって、「あけましておめでとう。仲間うちでリラックスした感じで自主映画の撮影をするんだけど、遊びに来ない?」って言われたんで、正月気分で気軽に「いいすっよ」と答えたら、いきなり「じゃあプロデューサーの連絡先が云々、明後日スタッフ・ルームで云々」みたいな話になって(笑)。
吉川 宮崎さんからすると、半ば騙されて連れて来られて憮然としてたんだろうけど、こちらとしては納得ずくで来たと思い込んでいるものだから。さらに、見ての通り強面で、キャラクターも強烈だから、俺も俺で「何だコイツは!?」って反応だったんです。そうしたら、『明日泣く』のラインプロデューサーで、僕の前作の『クネクネ』に続き、今作でもラインプロデューサーをやってくれている古賀さんが、「二人で一緒に買い出しでも行ったら?」と水を向けてくれて。「一人でいいんだけどな」って思いつつも、出掛けたんですよ。で、車中でも互いに寡黙なので微妙な空気が流れていたんですけど、「宮崎さんは、どんな映画がお好きなんですか?」って聞いてみたら、超然と「……そうですねえ、最近ではアイアンマン2です」って答えが返ってきて(笑)「この人、面白れえなあ」と。そこから意気投合した感じですね。その後、今度は古賀さんが『霊界の扉ストリートビュー』という作品を撮るにあたって、宮崎さんがチーフ助監督、俺はラインプロデューサーで付いたんです。アムモという会社は持ち回りで作品を作るので……。
宮崎 そろそろ僕にも監督させて欲しいですけどね(笑)。
吉川 まあ、こうした過程がありまして、非常に面白い人だし、また一緒にやれたらなあ、と。それで、アムモから今作の企画が持ち上がった時に、宮崎さんが幾つか脚本を書いていたことも知っていたので、「脚本書いてみてくれない?」って声を掛けたんです。