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第 32 回東京国際映画祭・観客賞&最優秀女優賞受賞作品

悪なき殺人

『悪なき殺人』画像 『悪なき殺人』場面画像1

公式サイト 公式twitter

2021年12月3日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
12月4日(土)デジタル公開

INTRODUCTION

この物語は、ある女性の殺人事件から始まる……はずだった。

フランスの山間の人里離れた町で、吹雪の夜にある女性が失踪し、殺された。疑われたのは農夫・ジョセフ。ジョセフと不倫する女・アリス。そしてアリスの夫・ミシェル。そう、我々はまだ知らない……たったひとつの「偶然」が連鎖し、悪意なき人間が殺人者になることを。この失踪事件を軸にして、5 人の男女がリアルタイムで繋がっていることが紐解かれていき、壮大なミステリーに絡んでいた事実が次第に明らかになっていく……。フランスの雪深い山間の田舎で起きた事件は、遠くアフリカのコートジボワールと繋がっていたのだった。偶然は奇跡にもなり得るが、絶望にもなり得る。幾重にも重なる「偶然」という「必然」を目の当たりにし、私たちは“神の目”で人間の本能、滑稽さ、そして運命の危うさの一部始終を目撃することになる。

5 人の男女の視点から描かれる本作について、ドミニク・モル監督は、黒澤明監督の『羅生門』スタイルを採用したことを明らかにしている。
黒澤明監督の映画『羅生門』(1950)は、被害者、被害者の妻、加害者の盗賊が三者三様の証言をし、事件の捜査が行き詰まってしまうという、同じストーリーが 3 つの異なる視点で描かれた作品として知られている。この手法を、クエンティン・タランティーノ監督が“羅生門スタイル”と呼び、彼の作品『ジャッキー・ブラウン』(1997)にも採用されている。

『悪なき殺人』場面画像2

本作はこのスタイルを取り入れながらも、「 5 つの視点は不揃いで絡み合っている。だが、必ずしもすべてを同じ時間を描いている訳ではない。あるチャプターでは時系列を遡る等、同じ時間を繰り返し描くというよりも、ストーリーに遊び心を持たせ、より洗練された作品に仕上げることができた」とドミニク監督は語っている。
3つの視点を5つの視点にした上、時間を遡るという新しい手法が加わり、真実に対して違った角度からスポットライトが当たっていく。登場人物の視点が変わっても、基準点として<吹雪の夜に姿を消したエヴリーヌの失踪事件>という軸がどのチャプターにも共通に存在している。すべての伏線は最終的に回収され、5 つの異なる視点が見事に集結する構成力は秀逸だ。『ジャッキー・ブラウン』に、時間を遡るデイヴィッド・フィンチャーの『ゴーン・ガール』の要素を彷彿とさせながら、小さなミステリーがやがて世界を跨ぐストーリーに発展していく様は、ハリウッド・レポーターに<『ファーゴ』と『バベル』を掛け合わせた作品>と評されている。サスペンスでありながら、人間の性(さが)をシニカルに描き出す一級の人間ドラマとしても見応え十分である。

COMMENTARY
  • 今野敏(作家)
    「あ、そうだったのか」「え?そういうことなの?」の連続。
    冒頭の出来事のすべてのシーン、すべての台詞を覚えておこう。
  • 名越康文(精神科医)
    出会いと別れは、人生の表舞台に過ぎない。
    裏側のすべてが見えてしまえば、その恐るべきループを目の当たりにして、我々は正気を保てはしないだろう。
  • 岡田惠和(脚本家)
    「たった一つの大きな偶然が、いろんな悲劇を生み出してしまう。巧みに紡がれていく超一級品の脚本を堪能できる映画です。見事すぎて、思わずうなる。ミステリなのに、脚本の出来に何度も膝を打ち、最後にはちょっと笑ってしまう。お見事でした。
  • 小柳帝(ライター・編集者)
    『悪なき殺人』は、一度観て作品の面白さに唸り、二度観て初見で把握しきれなかった細かな伏線の張り巡らせ方に感嘆し、三度観て事件の背景にある人間ドラマの深さに心から感嘆し溜息をつく、そんなリピート鑑賞必至の傑作なのです。
『悪なき殺人』場面画像3
  • 松崎健夫(映画評論家)
    時に、人と人との縁は幸運をもたらすが、この映画の縁がもたらすものは悪運だ。目には見えない縁で人と人とが繋がっているように、大陸と大陸も陸地以外の何かで繋がっている。フランスから遠く離れたコートジボワールとの間にあるものは「予想外なのに現実的」という奇妙で奇妙な縁なのだ。
  • 中条志穂(翻訳家)
    ドミニク・モル監督は『レミング』や『ハリー、見知らぬ友人』など、人間の底知れなさをスリリングに描く鬼才だが、本作では芸達者な俳優に支えられて、その人間描写の奥深さをいかんなく発揮している。切れ味抜群の練りあげられた脚本に感服すると同時に、「人間は偶然には勝てない」というキャッチコピーがじわじわと効いてくる、じつに怖い物語である。
  • 立川直樹(プロデューサー/ディレクター)
    緻密で濃密かつ知的……
    現代文学としても十分に適用するレベルの巧妙な脚本で、偶然の連鎖で絡まりあっていく5人の男女の運命を見事にまとめたドミニク・モルに脱帽だ。
    テンポ感や空気感も含めて迷宮の中から抜けられなくなってしまうような魅力を持った映画ならではの映画だ。
  • 田中千世子(映画評論家)
    小さな羽ばたきが地球に影響を及ぼすバタフライ・エフェクト。モルの映画を飛び交う愛欲・執心・献身・野心・嫉妬などのバタフライたちが事件を引き起こす。かつてないミステリアス心理劇の傑作!
  • 西島新(武蔵野館番組編成担当)
    巧妙に仕掛けられた伏線と回収、展開が進むにつれその都度、「成る程…そういうことだったのか……えっそうだったの?!」とひたすらに感嘆続き……動物だけが知っている、動物の眼だけがすべてを見ている、そこに観客の目線が重なり、登場人物たちが知り得なかった“真実”と“全貌”を、動物と観客のみが知るという、世にも奇妙なサスペンス群像劇。
    流石、一昨年の東京国際映画祭 観客賞!(因みに女優賞と 2 冠!)
    今年一番“唸る”映画、間違いなし。
『悪なき殺人』場面画像4
CREDIT
監督:ドミニク・モル (「ハリー、見知らぬ友人」セザール賞受賞 「マンク 破戒僧」)
出演:ドゥニ・メノーシェ(「エンテベ空港の 7 日間」「ジュリアン」),ロール・カラミー(「女っ気なし」),
ダミアン・ボナール(「ダンケルク」「レ・ミゼラブル」),ナディア・テレスキウィッツ,バスティアン・ブイヨン,
ギイ・ロジェ・“ビビーゼ”・ンドゥリン,ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
2019 年/116 分/カラー/シネスコ/5.1ch/R15+/フランス語、ヌシ語/フランス、ドイツ合作/
原題: Seules les Bêtes/英題: Only the Animals/日本語字幕:高部義之
© 2019 Haut et Court – Razor Films Produktion – France 3 Cinema visa n° 150 076
配給: STAR CHANNEL MOVIES

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12月4日(土)デジタル公開

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2021/11/26/19:52 | トラックバック (0)
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